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『あれ…爆豪くん？』
下へ降りると、爆豪くんはいなかった。
迷子の子供のように、不安そうな顔で辺りを見回す。
__実際、私が迷子か。
……やっぱり、私じゃ爆豪くんと釣り合うわけない。
ただの『偽』。
それだけだ。
やっぱり無理だったんだ。
そんな簡単に、上手くいくわけがない。
じゃあ、
「…………誰でもいいわけねーだろうが」
なんであんなこと言ってくれたんだろう。
賑やかな遊園地から一気に色が無くなった気がした。
人々の楽しいざわめきが嫌に感じる。
「ねぇ、君さ〜1人？」
『え？…私ですか？』
突然、知らない男の人に声をかけられた。
2人組の男達。
___チャラそうだ。
そんな第一印象か脳裏をよぎる。
「1人ネズミーってやつ？」
「よかったら俺らと回んない？」
『あ……えと…』
「それとも彼氏と来たりした？」
___ああ、彼氏か……
『彼氏……と、いました…けど…偽…彼氏で…』
「偽彼氏？」
「なにそれ」
男達は顔を見合わせて何言ってんだコイツと言わんばかりの表情をしている。
それでも、Aを誘う気は薄れていないようだった。
『私のこと好きなわけないし、マイペースで人の都合考えないし、腹黒でデリカシーもなくて、クズ発言ばっかだし…』
「それ彼氏じゃないじゃん？」
その一言に酷くしっくりした。
_ああそうだよ、彼氏じゃないよ。
彼氏なわけないじゃん。
「理想から遠い彼氏？大変だったねー」
そうだよ。
私が全然、理想じゃなかった。
クズで、嫌な奴。
私の理想じゃなかった。
優しくて、素敵な彼氏が私の理想だった。
私が間違ってた。
私が嫌だったんだ。
勝手に爆豪くんが嫌だと思って、私の陰湿な気持ちなすりつけて。
「…………誰でもいいわけねーだろうが」
そうだよ、誰でもいいわけないのに____
「どこ行く？パレードもうすぐだよね〜」
「手ェ離せやクソモブ野郎」
『え』
首からポップコーンの入った容器をぶら下げている。
彼とは思えない格好。
___似合わ…ないなぁ。
「あれ、もしかして彼氏？」
腕を掴まれ、多少驚いている男の1人。
「彼氏じゃねぇよ」
真っ先に否定する。
「え、じゃあ何？」
「偽彼氏」
___そんな言葉なのに、酷く安心した。
『爆豪くん…』
汗が１つ首から流れ落ちた。
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作者名：おにぎり。
| 作成日時：2021年9月5日 12時
