□別れないか ページ3
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___『美味しいね、このケーキ』
「そうだね」
それが彼氏と交わした最後の日常的会話だった。
__「A、今日は話があるんだ」
『話？』
彼氏は私より2つ歳上で、今は大学に通っている。
季節は夏に差し掛かろうとしていた。
体育祭と終わり、残すはテストのみ。
Aはあの天下の雄英高校に通う至って平凡な女子高生である。
素敵な彼氏が欲しいと夢見て、初めて中学生の同級生と共に参加した合コンで1人の先輩に告白され付き合うことになり約1年。
いつも先輩が行き先を決めるのだが、今日はA自らが決めたのだ。いや、決めてくれと言われたのだ。
「別れないか」
………へ？
Aは頭が真っ白になった。
想定外すぎる言葉にAの脳は思考が停止した。
『え、なんで…』
ようやく思考が追い付いたAが発した言葉は質問だけだった。
期待した。
期待にかけた。
もしかしたら嘘だとか、ドッキリだとか、そんなかもって。
______「他に幸せにしたい人が出来た…」
その言葉を聞いた途端、何もかもがどうでも良くなった。
私何のためにこの人と付き合っていたんだろうとか。
何のためにこの人と居たんだろうとか、そんな考えも頭をよぎった。
結果、私はフリーに、……非リアに元通り。
悲しいとか辛いとか苦しいとか寂しいとか、そんな気持ちを絵の具同士をかき混ぜて色をつくるときみたいに混ぜ合わせた。
そのまま1人、家路を辿る。
Aは普通科だが、雄英高は全寮制。
なかなか1人になることはない。
こういう時こそ1人にして欲しいとか、そういう思いが裏目に出るのが全寮制。
ははっ…と意味もない笑い声をつい漏らす。
外出届けをすっかりだしており、帰るには気まずい。
友人にもデートだと散々言いふらしてきている。
今まで貯めてきたお小遣い。
昨年母から買ってもらったワインレッド色の財布を開いて中身を確認した。
_____遊ぼう。
そう固く決心した。
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作者名：おにぎり。
| 作成日時：2021年9月5日 12時
