爆豪勝己の偽彼女【爆豪勝己】 (ページ15)

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薄い朱色のような色の照明に照らされている店内。

中央にはホールがあり、席が一つぽつんと寂しげに置かれている。

そこには会話をする夫婦の姿があった。
身につけている品々からして、恐らくかなりの富豪。

VIP席というやつだろうか。

壁のカーブに沿って歩いていくと、ヨーロッパかどこかの国から輸入してきたような風景画に彫刻がお出迎えした。

つれてこられたのは1番奥の窓側の席。
オーシャンビューとはいかなかった。

テーブルの奥にAは通され、爆豪は椅子をひかれてちょうど正面に腰をかけた。

ランチということもあって人はやや少ない。
それとも予約しないと来られないところなのか。

テーブルにはすでにメニューとシルバーが並べられており、案内してくれた店員さんが

「失礼します」

といいながら、銀色の水差しからグラスに水を注ぐ。

Aは思わず会釈した。

ふと目が合うと、愛嬌のある爽やかな笑顔を見せる。

「本日はありがとうございます」

ウエイターの人の名札には橘と書かれていた。
品がよく、すらっとした若い男性。

「手元にございます、メニューからご注文を…」

「まだ選ぶんで」

「かしこまりました」

王子が選んでいないということを告げるとウエイターの人はどこかへと去っていってしまった。

『え、いいんですか？店員さん追っ払っちゃって…』

「はよ選べや」

『え？決まってるんですか？』

「あたりめーだわ」

王子は堂々としている。
普段からこういうお店によくくるのだろうか。

メニューを開くと金文字が入ってさらに高級感が溢れている。

フランス語かイタリア語を日本語と併用して書かれたメニュー。

料理の説明がものすごく細かい。

『ど、どれに…ていうか値段が…』

上のランチは1万4000、下のランチは1万。値段が桁違いだ。

「アァン？俺が払うからテメーは好きなモン食えや」

血の気が引いた。えっ、という顔で爆豪を見る。

思わずホッとしかけたが、

『いや、流石に！』

Aはそう言った。

「金ならあんだよ」

『いや、そういうわけには…』

一応Aの財布には1万5000円が。

おろせばまだあるっちゃある。

「俺が払う、テメェは払うんじゃねぇクソ」

『あ、は……はい…』

見透かすような眼差しに負け、返事を返した。王子が店員を呼んで、それぞれコースを頼んだ。