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「あ、ここの奥だったよね!蛍」
『えっ?あぁ、うん。
でももお蛍いないよ?」
バーベキューやら滝やらかかれた賑わしい看板に見覚えがあった。去年のこの時期、いや、もう少し早かったかもしれない。Aさんと2人でここに来た。
『ほら、もおおらん』
車を降りてはみたが、あたりは真っ暗で、川を流れる水の音と虫たちの声がするだけだった。
「岐阜弁?」
『ああ、しまった』
僕はふとした時に顔を出すAさんの方言がたまらなく可愛くて好きだ。
「いいのに」
『あっ』
「あ…」
何気なく上を見上げた僕らは、同じものをみつけて、声をあげた。
『綺麗だね』
電灯もないこのあたりは、満天の星空が手に取るようにくっきりと見えた。
「すごいな」
『うん。でも、真冬の方がもっと綺麗なんやよ?
…あ』
この澄んだ空気と、この景色とあと全部がAさんにそうさせるんだと思う。
「ここでは諦めなよ、方言隠すの」
『あはは、そうやね』
観念したようで、Aさんは優しく笑った。
車に戻らず少し歩くと、さっきとは別の小学校があった。暗さにも慣れた目には、夜でも遊具がよく見える。馬跳び用に半分埋まって並んだタイヤの上をバランスをとりながら1つずつ飛び乗っていくAさん。
途中のタイヤに腰掛けてそれを見ていると、1番奥まで行って来たAさんが戻ってきた。
「上手」
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作者名:rukai | 作成日時:2017年7月25日 22時