優しさに包まれて (ページ4)

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『んん…あ、ジン君。
おかえり。寝ちゃってたや』

その場から動けずにいると、目を覚ましたAさんが体を起こして、またふわっと笑う。

「ねえAさん、
…明日病院って…何？」

僕の言葉に驚いたようで、目を見開いたがすぐに液晶に表示されたメッセージに気がつき、観念したのか次は眉を下げて困ったように笑った。

『おじいちゃんがね、
ずっと入退院を繰り返してたんだけど
もう永くないみたいなの』

「永くないって…？」

『うん。
ごはん食べれなくなってて
認知症もすすんでて…
でも、延命治療はしないんだって。
おばあちゃんとお父さんが決めたの。
だから…』

そんなこと初めて聞いた。
僕の目に涙がたまって、あふれ出そうとしてるのに、Aさんはとても冷静で、身の上を淡々と話す。眉を下げて微笑みながら。

「なんでそんな大事なこと…」

『ごめん。心配かけたくなくて…
黙っていようと思ったわけじゃなくて、…タイミングというか…』

心配かけたくないと思ってくれてたことは百も承知で、なかなか一緒に居ないから言い出せなかったこともわかる。そんなこと分かってるけど、

「ごめん。
ユンギに呼ばれてるんだったっ」

こんなとき大人の男なら、気づいてやれなかった自分を責めるのだろう。でも今は、僕だから、僕が頼りないからAさんは言ってくれなかったとしか思えなかった。

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