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今日は帰りが遅くなった。Aさんは明日実家に帰ると言っていた。もう、寝てるかもしれない。玄関を開けると、リビングの明かりがついている。起きてるの?




「Aさん?」


僕の声かけに返事はなくて、畳まれた洗濯とソファーに横になるAさんを見つけた。珍しい。



「こんなところで寝たら風邪…っ…」


初めて見た。
Aさんの涙を。

目頭から頰へと線を描くその涙の訳を僕は何も聞かされてなくて、軽くパニックだった。怖い夢を見ているのだろうか、それとも何かあったのだろうか…声をかけられずにいると、手に握れた携帯に誰かからのカトクが入り、バイブ音が唸った。Aさんは起きなくて、上に向けられた液晶にメッセージが浮かぶ。



" 母
明日病院に直接くる?
連絡ください。"


病院という文字に心当たりがなさすぎて、目を疑う。


"『お母さんがね、
たまには帰って来いって』"



実家に帰る本当の理由を僕は知らずにいるのに、いつもと何一つ変わらず優しく笑うAさん。目の前で1人、眠りながら泣くこの人に、僕は必要とされていないのかもしれない。


どうして…

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作者名:rukai | 作成日時:2017年7月25日 22時

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