12 ページ12
.
「幸せだよ。絶対」
『…ジン君…まで』
「ちゃんと、お爺さんに届いてるから。
Aさんがそんなふうに思ってくれてること。それに、Aさんがそばにいてくれるから、お爺さんは幸せだよ。絶対。
今の僕がそうだもん。
大丈夫。幸せだから。
最期までそばにいてあげて？」
コクンと頷き、そのあと小さな子どもみたいに声をあげて泣くAさんが落ち着くまで、僕は背中をさすり続けた。
『ごめんねジン君…ごめん』
「ううん。謝るのは僕だよ。
ずっとしんどかったよね。」
腕の中でまだ涙を止められないAさんが首を一生懸命横に振ってくれる。
「頼りなくてごめん。
そばにいてやれなくて、ほんとごめん」
『何言ってるん？
…私、ジン君のこと頼りないなんて、思ったこと1度もないよ？』
「でも、こんなに溜め込んで…」
『違うよ。ジン君のこといつも頼もしいって思ってるよ？さっきだって親に電話してくれて、しっかりしてるなって思った。』
「そんなの、当たり前だろ」
『私ね、泣くことをやめてたの。泣いたって、どうにもならないでしょ？だから…。まぁ、こんなに泣いておいて、何言ってる…っ「じゃあ、もうやめるの、やめなよ。
ただし、僕の前だけ。ね？」
Aさんは、片手で鼻を隠しながら、泣き止んだばかりの潤んだ目で僕を見つめて、ふわりと微笑む。月明かりに照らされたその表情がとても綺麗で、とても愛おしく思った。
『それ。その顔。』
「え？」
『ジン君のその笑った顔が好きなの。優しくて、あったかくて…んーなんて言うか、ホッとする。』
照れているのだろうか、Aさんは顔を手で隠した。
僕がAさんに思ってたことと同じように思っててくれたことが嬉しくて嬉しくて仕方なかった。抱きしめるだけじゃ足りなくて、お姫様抱っこをした。
『ちょ！ちょっと待ってまって！
ジン君ってば！
私重いよ！ダメやってば！』
Aさんは慌てて暴れるけど、全然重くないし、むしろ軽いし、とんでもなく可愛い。広いグランドの真ん中まで運ぶと、慣れたのかAさんは大人しくなっていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：rukai | 作成日時：2017年7月25日 22時
