[テニプリ] 氷帝にやって来たのは？ １５ 〜努力家少女〜

７０９．持ち合わせていない ページ41

大石が意識を手放して静寂が続く。
誰一人、何も発しない。

カリカリ――

だが、数秒の間が空いた後、小さく何か音が聞こえ始めた。

カリカリカリカリ――

その音は止む事はなくむしろどんどんスピードがアップしているように思われる。
何の音なのだろうか。
柳生と向日が音のするほうへ顔を向けると、そこにはニタリと笑みを零しながら一心不乱にノートにペンを走らせている乾の姿があった。

向日)お、おい！

乾の笑みに若干引きつりながら彼に声をかける。
すると、書くのを邪魔されたとでも言いたそうに眉を動かして乾が向日のほうを向く。
ノートへの記述は一旦休憩だ。

乾)何だ。俺は今データを採ってるんだ。邪魔しないでくれ

向日)データってお前、まさか……

すると乾は言いたい事が予想できたのか「フッ……」と笑うと倒れている大石に近づいた。

乾)馬鹿なものだな。自ら飲んで自滅するとは……ふむ、ここはこうか……

大石を”馬鹿”呼ばわりしながら、マイペースに大石を観察する。
顔を覗き込んだり、腕を持ち上げてはノートに書くという繰り返しを何度もしている。

柳生)これは貴方のせいでもあるのですよ。貴方は何も感じないのですか？

乾)感じているに決まっているだろう。ラッキーな事にこの飲み物を飲んだ結果のデータが一人分多く採れるんだからな。嬉しくて仕方ない

嬉々とした声できっぱりと言い切る。

その答えに思わず柳生は口を開閉させてしまった。

柳生)嬉しくて仕方ない？貴方には罪悪感というものがないのですかっ！

乾)罪悪感？生憎そんなものは今、持ち合わせていない

そう言うと、またノートに何かを書き始めた。

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