[テニプリ] 氷帝にやって来たのは？ １５ 〜努力家少女〜

７０８．馬鹿な方 ページ40

倒れた時の菊丸と同じように大石は喉元を抑えて苦しみ始めた。

大石)う゛……

柳生)しっかり！

柳生が大石を支えようと手を伸ばした。

パシ――

が、しかし、それは大石自身によって遮られた。

大石)触らな、いで……くれ

何とかそう言うとおぼつかない足取りで菊丸の傍目指して歩き始めた。
一歩一歩、崩れそうになりながらも必死に耐えて。
震えながらも手を前に出して一生懸命に歩く姿は見ていて痛々しい。

大石)うぐっ！……はぁ、はぁ

よたよたと菊丸に近づいていた大石。
もうすぐ、彼の傍にたどり着く。

そう思った時だ。

大石)！？

力が全て抜けたのかばたりと床に倒れてしまった。
だが、その状態でも大石はほふく前進の要領で諦めずに菊丸目指して進んだ。

向日)お、おい……し

涙の跡が残る顔で自分と菊丸に近づいてくる大石を茫然を見つめる向日。
そんな彼に大石は微笑むとぐっと手を精一杯伸ばした。

大石)英二……

けれどもその手はあと一センチ菊丸の頬には届かなかった。
大石の腕がふにゃりと床に叩き付けられた。

柳生)大石君！

柳生が駆け寄って確認する。
だが柳生は悲しそうに眉を下げて小さく首を横に振った。

柳生)……貴方は馬鹿な方ですね

目を瞑って動かなくなった大石に柳生はその一言をかけた。

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