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152話 ページ4

今日も仕事終わりに高木家に寄る。
まだ19時。
一緒にご飯だって食べられるかもしれない。
ワクワクした気分でチャイムを押した。

「あ、いらっしゃい。
いつもありがとうね。大貴くん忙しいのに」

「いえいえ、全然ですよ。
いつもは夜遅くにすみません」

丁寧に頭を下げて、買ってきた果物を手渡す。
高木のお母さんは『ご飯のデザートに出すわね』と優しく笑った。
その顔がお腹を撫でてた時の雄也にそっくりで
胸の奥がぎゅっと握られたように痛かった。

作って置いてくれてたご飯のラップを除けながら
高木のお母さんがバツの悪そうな顔をした。

「そうそう、今日ね雄也、機嫌悪いの。
早く来てくれて本当に助かる。
ずっとグズグズ泣いてたから、そばにいてやって?」

「行きます、すぐ行きます」

雄也の部屋に入ると枕に突っ伏して肩を震わす雄也がいた。

「どした雄ちゃん、なんかあった?」

雄也を抱き起こして、頬を撫でる。
涙でべとべとになった雄也の唇に自分の唇を重ねる。

「もう、無理」

「うん」

「なんで赤ちゃんっ」

「うん」

「俺、あの子のそばに行ってやんないとって」

泣きながら震える雄也をぎゅっとキツく抱きしめる。
このまんまだと雄也が本当に天ちゃんの元に行ってしまいそうで。

「雄也の気持ちも分かるけど、
俺、雄也まで失ったら生きていけないんだけどなぁ……」

「天ちゃん、怒んないかなぁ…?
ママが一緒にいてあげれないけど」

「俺の死んだばあちゃんたちが一緒に遊んでくれてるから大丈夫だよ。
天ちゃんだって、ママが泣いてんの嫌だと思うよ?」

雄也はうんうん、と頷いてから
しばらくして泣き止んだ。

その顔は、あの日から初めて
曇りに日が差したようなものだった。

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Maori - 初コメ失礼します。このお話の続きはありますか?どうしても続きが見たいんです。よろしくお願いします。 (6月18日 10時) (レス) id: 5d5d467a0f (このIDを非表示/違反報告)
らずり(プロフ) - 初めてコメントします。こちらの作品がここ数年内に出会った中で1番大好きなお話で、今まで何度も読み返しました。久しぶりに更新されてとても嬉しいです。続きも楽しみにしております。 (2020年5月19日 18時) (レス) id: fdb0262007 (このIDを非表示/違反報告)
えはと(プロフ) - つなぐ。さん» 思い出してまで読んでくださったんですか!ありがとうございます!幸せな雄也さん見れるまで少々お待ちくださいね (2019年7月28日 14時) (レス) id: e291ea7c47 (このIDを非表示/違反報告)
えはと(プロフ) - 玉響さん» ありがとうございます!まだまだ続くとは思いますがありたかを応援してあげてください (2019年7月28日 14時) (レス) id: e291ea7c47 (このIDを非表示/違反報告)
えはと(プロフ) - A-yuy-Aさん» なかなか幸せにしてあげれてないですが、いつか必ずにこにこの雄也さんが見れるはずなのでそれまでよろしくお願いします!私も弱ってる雄也さん好き… (2019年7月28日 14時) (レス) id: e291ea7c47 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えはと | 作成日時:2019年6月16日 15時

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