君の蒼い花。3章=オリジナル= (ページ3)

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102話ページ3

「そういえば、なんでお前こっち来たの」
俺が気になってて、でもタイミング無くてずっと聞けなかったこと。
鶴がどうしてこんな片田舎の助産院に来たのかということだった。

「助産師したかったから、かな」

「え？市民病院で働いてたじゃん？」

「大きい病院は1つの家族に寄り添う時間が少ないからさ。俺だってここの助産院で生まれたし」

「そうだったね」

鶴の両親がどちらも男だったことを思い出した。
まだまだ偏見がない、とは言いきれないこの世の中。
鶴が高校の時、それで揶揄われた。
『晴生は軽蔑しないんだね』なんて半泣きの顔で言われたこともあった。
軽蔑する要素どこにあんだよ、って思った。
あの時なんて返したかは忘れたけど。

優しくて、真面目な鶴。
こいつにまだパートナーがいないのは不思議なこと。
誰よりも早く結婚しそうだね、って学生時代よくみんなで話していた。

「鶴ってパートナーまだいねぇの？」

「あー…要らないかな」

「要らないんだ」

そんな風に思ってるとは思わなかった。

「やっぱ怖いじゃん、一筋縄にはいかないよ」

「……なんかあったの」

「…また、話せるようになったら話すわ」

そこまで言うとコップに入ってるお茶を飲み干して
洗濯物干してくるわ、と席を立った。

「……それ、俺のお茶だったのに」

去り際の鶴の顔がなんだか
腑に落ちなかった。