君の蒼い花。3章=オリジナル= (ページ2)

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101話ページ2

佐倉さんの目には光がなくて
色が変わるくらい唇を噛んでいた。

「そんなこと、ないでしょ？」

服のボタンを留めながら優しく語りかける。

「有乃ちゃんを産んだのは、佐倉さんただひとりですから」

有乃ちゃんをもう一度、腕の中に戻して
哺乳瓶を手渡す。

ごくごく、と中身がぐんぐん減っていくのを見て
佐倉さんは少しだけ笑った。

「有乃ちゃん、ほっぺがぷくぷくだ」

「有乃。美味しいか？」

桃色の頬がかわいくて、翡翠色の目がキョロキョロと動いた。

「赤ちゃんもお母さんも初めて同士なんです。
上手くいかなくて当たり前です。
だから、母乳出ないだけで自分責めないでくださいね？」

口をきゅっと結んだまま頷いてくれたのを見て
安心してしまった自分がいた。

「お疲れ様」

「あ、さんきゅ」
書類整理している俺にルイボスティーを淹れる鶴。

「頑張ってるね、晴生。
まあ昔から真面目だったけどさ」

「お前もじゃん」

鶴は絵に描いたように真面目で、
提出物はきっちり、字だって綺麗で
寝てしまった授業のノートを貸してもらった回数は数えきれない。

「栄養士になる、って言ってたのにまさか助産院で働いてるとはなぁ」

「色々あったし、誠司くんが兄ちゃんの幼なじみだし。今は献立考えてるもしてるし」

「そっか」

温かいルイボスティーが喉を通っていく。
陽だまりのように優しい味。
何故か、母さんと兄弟5人で陽の当たる縁台で寝た思い出がふわりと脳裏を掠っていった。