。 ページ39
「傘小さいから」
近づかせるために手を繋ぐ。
小さな手。氷のように冷たくなっていた。
それが可哀想で仕方なかった。ずっと寒くても寂しくても1人で耐えてきたんだと思うと苦しくなった。
「ちょっと待ってて」
バス停のそばにある自販機でコンポタを買う。何故かここは年中ある。冬は薮ちゃんとか大ちゃんとか雄也とよく飲んでた。
あちあち言いながら知念に手渡す。
「バイト代、入ったら返すね」
「奢りだから。飲みな」
「……ありがと」
1口飲んでほわぁって優しいため息をつく。
「あったか」
少し笑ってくれた。それだけですごく嬉しくて。きっと苦労ばっかしてきたんだろうなって思った。
「コンビニでご飯買って家で食べような」
今日ラストのバスに揺られながら
窓の雫ごしに外を見ていた。
「寒くない？怖くない？」
「ありがとう大丈夫」
白い手も少しだけ温かくなってきていた。よかった。
「ごめんね、僕のことなんてほっといて良かったのに」
“ほっといて”
前にも一度言われたことがあった。
体育のマラソンでゴールしたらすぐ傍に知念がいて、ふらついたから肩を支えた。
「大丈夫？今保健室の先生呼ぶから」
それを見た大ちゃんがゴールしてまだ息も荒いのに、ダッシュで保健室に向かってくれた。
「……いいから」
「え？」
「僕のことは、ほっといて…」
「いや、でも」
「ほっといてよ！」
「知念！」
体育の先生も飛んできて、知念を姫抱っこした。
「山田すまんな。今はそっとしといてやれ」
そのあと、俺ひとり体育教官室に呼ばれて少し知念の家の話をされた。
バイト禁止の学校だけど、先生みんな知念のバイトには目を瞑っていること。
生きていくために必死だと。
「見守ってやってくれないか」
山田には懐いてる方だから、と先生にお願いされてから俺は知念の傍にいるようにした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えはと(プロフ) - ひー。さん» いつもありがとうございます！どっちも進められるように頑張ります！ (2018年12月1日 17時) (
レス) id: e291ea7c47 (このIDを非表示/違反報告)
ひー。(プロフ) - 新作待ってました!! これからの展開が楽しみです!! 同時進行頑張ってください!! (2018年12月1日 14時) (レス) id: 26f1b61412 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えはと | 作成日時：2018年12月1日 12時
