二人の関係

38 ページ38

.


こんな日に限って忙しくて。

その後２回電話を掛けたけど…
仕事中みたいで…。





６時過ぎ…。
きっとヌナの仕事が終わった頃に。

一度着信があったことに気付いたのは、もう日付が変わったあとだった。







おやすみ、だけ言おうか…？
今、声聞いて冷静でいられるかな？





テレビ局の静かなロビー。
みんなが集合するのを待つ間、携帯の画面とにらめっこ。


寝てるかな？
メールだけしようか？


そんなこと悩んでる時聞こえてきたのは、…今、僕を悩ます元凶。







「分かったよ(笑)今終わったんだー。……うん、今から行くから…」


そのあと続く、女の子の名前は…



ヌナではなかったけど…。



それに安心するのもおかしな話だよな。





電話を終えて、疲れたー…なんて隣に座ったヒョンに、無性にムカついてくる。

なんで僕がこんなに悩まなきゃいけないんだ？









「ヒョン…、新しい人、できた？」


…我慢できず、聞いてみた。




「えへぇ？(笑)なんだよー。ちょっと彼女持ちだからって、そんな言い方すんなよー(笑)」

「や、だって(笑)…楽しそうに電話してたから」

…吊られて笑っちゃう僕も僕だ。




「…彼女がいない、って。さみしーよ。

お前今までいなかったから分かんないかもだけどね…」



……。






…まるで


…ドラマのワンシーンを見てる気分。



床の一点を見つめたまま、前屈みに膝の上で手を組むヒョンが…


ただ、カッコよくて…

何も言えなくて…




突然、今。

ヌナのことを言えてない僕が悪いんだって思いがぶわっと込み上げてきた…





「ヒョン」



言うなら今だ。


「んー？」




…実は、と切り出したタイミングで。





チーン……

目の前のエレベーターのドアが開き、ヒョンたちがガヤガヤと降りてくる。


「お待たせっ！」
先頭に立つトゥギヒョンにそう言われて、

もう僕はそれ以上話せなかった…。





……。




やっと決心したこの気持ちが
行き場をなくして、僕の心を騒がせる。









『今から行くから』

一言、メール。
それに既読がつくかなんて、
返信があるかなんて関係ない。






局前に並ぶタクシーに飛び乗り、ヌナのマンションの名前を告げると、静かに目を閉じた。




直球か変化球か…。

どう切り出そう…？





ポケットの携帯が震えて、

ヌナが起きて待ってるんだって


見なくても、分かる…。




.

39→←37

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す