二人の関係

16 ページ16

.


振られて落ち込む男…


…には、見えなかった…。



いや、

ヒョンなりに、あの人を彼女として、

特別に…大切にしてたのは分かる。



ただそれが、あの人が望む『特別さ』じゃなかった…ってこと。






恋愛の価値観の違いだな、うん。









翌日。

テレビ収録を終えて、そのまま打ち上げと称した食事会へ。

こっちのプレスも何人かいて、完全にくつろげない雰囲気がイヤで、会場を出た。


建物内をウロついてたら、

ルーフテラスに出られる扉が開いた。









「…きもちー」

夜風が強くて思わずジャケットのボタンを留めたけど。


こんな時に思い出すのは、





…漢江。





夜、ふたり並んで歩いた時のドキドキ。


あの時も風が強くて…







早くベンチに座りたいんだけど、空いてるベンチがなくて…。

見つけたと駆け寄ったら、酔い潰れたサラリーマンが寝転がってて…酒臭いねって笑いあったり。



僕たちが後ろを通ってもお構いなしにキスしてるカップルに、こっちの方が顔を真っ赤にしたり。





そんな、何でもないことが…

楽しかったな。




僕は…


あの人のことばかり考えてる。





あの人が振ったんなら、もうその心にヒョンはいない？


…すぐ、デートに誘ってもいい？





もし、今は辛いなら…

ヒョンとの思い出が、辛いものなら


僕を使って忘れてくれたらいい…。









初めて、

漢江の男に電話を掛けてみた。






「…キュヒョン君？」



…！
久しぶりに

…好きな人に名前を呼ばれる…。



それだけで、こんなにドキドキするなんて。



「…もしもし？」
「あ、…こんばんは。キュヒョンです」

「…うん。…久しぶり…」





ずっと、

遠慮して押さえつけてた想いが

この異国の地で…溢れ出る…。





「…Aヌナ。明日、韓国帰るんです。




帰ったら、…会いたい」





なんか今、抱きしめたくて堪らない。

Aヌナ…。







「……。」



「Aヌナ…？」

「…あ、あぁ、ごめんなさい。
キュヒョン君に初めてAヌナって呼ばれたなーって思って…」




「もう僕には『ヒョンの彼女』じゃないですから」


「…ん(笑)…聞いたんだね」

あ、今また、あの顔したのかな？
僕の好きなあの寂しそうな笑顔…。




「…会いたい」





「…私の気持ちが、…キュヒョン君に向いてなくても…いいの？」




「ん。…会いたい」




まだヒョンが二人の間にいてもいい。


会いたい…。

.

17→←15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す