にゃん56 ページ34
人のいない冷たい廊下を横切り、誰もいない保健室のベッドに、そっと横たえる
初めて抱えたこいつは、俺が心配になるほど軽くて、さっきとは別な不安が俺の中に生まれた
「ふぅ⋯⋯」
無意識に口から息が漏れる
初めて“女の子”に触れたような感じがした
近くの椅子に腰掛け、ぼんやりとAを見る
それまでやり場のなかった感情が、ふと自分の中に落ちてきて、ようやく息ができたように楽な気持ちになった
俺はAのことが好きなんだ
髪を指ですく
初めて会った時から、俺の心の隅に隠れていたモヤモヤが、やっと姿を現した
心配ばっかかけさせやがって
勝手にしてるだけのくせに
図々しいよな、と我ながら思う
こいつが俺をそういう目で見ていない事は十分にわかっている
でも期待してしまうのだ
もしかして、いつか、俺のことを見てくれるんじゃないだろうかって
自分の中に邪な考えが浮かんできて、慌てて打ち消す
逃げるように保健室を出る
「⋯⋯くっそ、何考えてんだよ」
自分の心臓の音が、廊下中に響き渡っていないか不安になった
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作者名:まあ | 作成日時:2024年3月9日 13時