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「ほな寝るか」
「うん」
他愛もない話をしばらくした後
夜も更けてきて徐々に眠気に手を引かれる
「どこで寝ればいい?玄関?」
「は、いや玄関は無いやろ」
「別にどこでもいいよ、廊下とか」
どうせ一人暮らしでスペースも無いでしょ、と
つくづく斜め上をいく女だ
どこのどいつが人を何も無い玄関に寝させるのか
「ベッド使い。俺は布団敷くから」
「いいの?」
「駄目やったら言わん」
治がこっちに来た時のために、と母親が余計な気を回して押し付けてきた布団を使う日が来るとは
要らんとか言うてごめんな
押し入れの奥に押し込められた布団を引っ張り出すと、少し埃が舞った
部屋を暗くしても、どうにも眠りに落ちることは出来そうにない
地べたに感じる固さだけのせいではなかった
先程までの眠気が消えてしまったようだ
「⋯⋯ねえ宮さん、起きてる?」
しばらくしてから、暗闇に声が響く
まだ寝ていなかったのか
知らない家で気が休まらないというようには見えなかったが
「おお」
「そっち、行っていい」
「はあっ、」
「ちょっと寒いから」
その言葉を耳が捕らえたのとモゾモゾと布団の中に入り込んで来たのがほとんど同時だった
背中に仄かな温もりを感じる
どうにもそれが落ち着かず寝返りを打とうとすると、ひんやりとした手が背中に触れた
「⋯⋯宮さんは、優しいね」
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作者名:まあ | 作成日時:2024年4月21日 16時