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ドライヤーの音を聞きながら、これって犯罪やないよな、と自分に念押しする
困っていたから助けた、それだけ
邪な気持ちなど持ち合わせてはいないし、不用意に近づくつもりもない
だから、大丈夫
まああの女にとっては大きなお世話かもしれないが
「ねえあんたって綺麗好きなの」
「まあ」
脱衣所から首だけ出してこちらを見つめている
はらりと髪が舞う
余計なものがあるのが好きでは無い、ただそれだけ
綺麗好きかと言われればよく分からなかった
それにしてもこの女の人柄がよく掴めない
大人びていて、それでいてあどけない子供のような一面も持ち合わせている
「なんか今まで見てきた男達の部屋よりもちゃんとしてる」
「⋯⋯そーか」
達、と複数形なのが気になる
渡り歩いてきたということを隠す気は微塵も感じられない
そのまま首を戻すとドライヤーが再開される
鼻歌なんかも聞こえてきて、初対面の男の家で気を許し過ぎではないか、もう少し警戒心を持つべきだろうとまた余計な心配をしてしまう
あの女といると、調子が狂う
ただ、それに満更でもない自分がいることに気がついて、深く長いため息が口からこぼれた
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作者名:まあ | 作成日時:2024年4月21日 16時