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「なあオミオミ、ツムツム最近元気ねえよな」
「俺を巻き込まないでもらっていいすか」
「どうしてだと思う!?」
「聞いてねえ⋯⋯」
そういうことは本人の前で言うもんやないやろ
そう言い返すような気力も無い
周囲にも一目でわかるほど落ち込んでいるということだろうか
ましてや木くんにも気が付かれてしまう程とは相当なのだろう
そこまで考えて、また大きなため息が出た
結局あれから数日が経過してもAが戻って来ることはなかった
合鍵は今も机の上にひっそりと佇んでいる
もしかすると戻って来るのではないか、という淡い期待は無惨にも打ち砕かれた
期待なんてしない方がいいとわかっていたのに
それでもほんの僅かな可能性に賭けたいと思ったのだ
「おいツムツム、なんで元気ねーの?」
「木くんは元気やな」
「今朝食った卵かけご飯美味かったからかなー」
今はこの単純さが羨ましい
俺も飯一つでこの気持ちが晴れたなら楽なのに
「なあもしかして、あの猫ちゃんのこと?」
「猫?」
「こないだ話してただろ、猫拾ったってさ」
そう言われてみれば例え話として出したような気がする
「なに、脱走されたとかか!?」
脱走⋯⋯
ニュアンスとしては近いのかもしれない
「まあそんなもんやな」
「じゃあ探さなきゃじゃん!」
その言葉を飲み込めず反芻する
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作者名:まあ | 作成日時:2024年4月21日 16時