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「あんた、変な人だよね」
風呂からあがって開口一番、髪をタオルで拭きながら
なんとも失礼な一言目
頬の腫れは引いてきたのか目立たなくなっていて他人事なのに安堵感を覚える
「見ず知らずの女に声掛けて雨宿りさせるとか、どこの少女漫画だよ」
「はあ?」
「それとも何、下心でもあんの」
「んなもん無いわ」
雨から回復したせいか尖りが鋭い
もう少し雨の中で話すべきだったか
その方がしおらしかっただろうに
「別にいいよ、何しても」
耳を疑うような言葉が放たれる
「何されても文句言えない立場だし。お好きにどーぞ」
ふ、と唇が緩められる
諦めとも蔑みとも取れるような感情が澄んだ瞳を濁らせていた
口元は笑っているのに目はこちらを見てはいなかった
おそらくこの目には自分は映ってないのだろう
少なくとも高校生の時、自分の周りにいた女で同じような目をする奴はいなかった
何を経験し何を思えば感情を塗りつぶしたような瞳になるのか
まるで私が言った通りでしょう、とも言いたげな視線に言いようのない苛立ちを覚えた
「ガキが何ゆーてんねん」
傍に置いていた新しいタオルを濡れている頭に放った
「さっさと髪乾かしてき、風邪引くで」
信じられないものを見るような目
前髪から水滴が垂れてスウェットを濡らしている
ほら、ドライヤーはあっちやと脱衣所へ背中を押した
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作者名:まあ | 作成日時:2024年4月21日 16時