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近くにある公園のベンチにずぶ濡れになりながら腰掛ける女
髪や衣服が濡れるのも忘れているのか、そこから一歩も動こうという意思は感じられなかった
一方俺はと言うと、そんな女から目が離せずにいた
ただただ、白い息を吐いて佇むことしか出来ない
傘を差している中でも熱が奪われていく
傘の柄を握り締めた
帰るのか、声をかけるのか
答えはとっくに一つに傾いていた
「なあ、帰らんのか」
「⋯⋯ああ、私?」
「自分以外おらんねやろ」
突然遮られた雨を不思議に思ったのだろうか
視線が上がりぶつかる
まっすぐで人を射通すような目が印象的だった
「帰らんのか」
「別に」
「答えになっとらんで」
「⋯⋯関係ないじゃない」
先ほどの大人びた表情とは一転して拗ねた子供のような返事
そのアンバランスさが一層この女への興味を掻き立てる
しばし睨むような視線が刺さったあと、諦めたように視線をずらして吐き出した
「帰るところはない。だからここにいる」
「まだ子供やろ。家は」
「無いようなもんだよ」
突然空間に区切りを入れられたような感覚
ここからは入り込むなというのが肌で感じられる
だからといってこの引かれた線の通りに距離を置いたとしたら、切り離されたまま二度と交わることはないだろう
そんなもの、従ってたまるか
「雨宿りくらいなら、させてやれるで」
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作者名:まあ | 作成日時:2024年4月21日 16時