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あー、だるい
あまり綺麗ではない天井を睨んで息を吐いた
ゴミを捨てるのが面倒
起き上がるのが面倒
雨が降っているのが面倒
難癖をつけて起き上がらなくていい理由を生み出そうとしている
でも今やらなければ、あとでもっと面倒になる
自分に言い聞かせるようにして、なんとか起き上がった
開けていないカーテンはいつものように光を含んでおらず部屋を照らしてはくれない
それがひどく嫌で、絶対明日晴れろよ、と念を押した
東京に引っ越して来てから、上手くいかないことが明確に感じられるようになった
高校の時にはあまり感じることのなかった焦り
自信が崩れ去り断崖へと追い詰められていくような感覚
もちろん高校とプロは違う。そんなことはわかっているし、それなりに覚悟していたつもりだった
でも思っていたよりも自信の喪失は俺を蝕んで、内側から喰いつくそうとしているようだ
階段の下から言い争うような音が聞こえる
なんや、喧嘩か
タイミング悪いな
「出てけよ、お前の顔なんて二度と見たくねえ」
「あっそう」
突然開いた扉から転がるようにして出てきた女は、赤くなった頬を押さえてなお、斜め上を睨みつけていた
「くっそ、そういうところが気に入らねえんだよ」
荒々しく扉が締められると、それを合図にしたように女は雨の中へと繰り出した
ふらふらと頼り無さげで、それでいて毅然としたその背中になぜだか目が惹きつけられて離れない
さっきまでゴミを捨てることすら億劫だったのを忘れて、ぼんやりとした雨の中をゆっくりとかき分けた
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作者名:まあ | 作成日時:2024年4月21日 16時