本当に ページ21
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目が覚めた時
ナナミンは私の右手を握って
一度寝たら本当に起きない方ですね って
穏やかに笑ってた
「大丈夫ですか?」
『••••••ごめんなさい』
何に対しての
謝罪なのか分からない私の頬を
優しく撫でるナナミン
「何もなくて本当によかったです」
『•••ナナミンも出張お疲れ様。おかえりなさい』
「ただいま戻りました。•••じゃ、帰りましょうか」
私が裏切った人は
こんなに優しくて
裏表がなくて
誠実で
どんな人にもすごく思いやりがあって
きっと一生出会うことなんてない、素敵な人
ネクタイが曲がったとこなんて見たことない
髪が乱れたところも
スーツに皺があるところも
目の前のナナミンは
やっぱりいつも通り完璧だった
2人で帰る帰り道
もう平気だからって私のわがままで
タクシーに乗るのを断って
歩いて帰った
優しく繋がれる右手
目の前には、私のマンション
ナナミンは泣きそうになりながら
寒いですねって空を見上げて
「友達に戻りましょう」
私の方を向きながら、優しく笑った
『•••ナナミン』
「Aさん、泣かないで」
『•••ごめん、なさい』
私のせいなのに
泣いちゃうなんて最悪だ
そんな私に
ハンカチを渡してくれるナナミン
「これからは、涙を拭くことも、何かあって駆けつけることもできません」
『••••••うん』
「けど、あなたの幸せを誰よりも願ってます」
泣き止んでくださいって
困ったように笑うナナミン
ベージュのスーツも
私があげたネクタイも
ピシッと決めた髪型も
きっとこの先こんな近くで見ることなんてない
紳士でスマートな姿も
Aさんって困ったように笑う姿も
きっと、これが最後
『•••ナナミン。いつもいつもそばにいてくれて、ありがとう』
涙でぼやける私を
強く抱きしめる、ナナミンは
やっぱり最後の最後まで、優しかった
「•••すみません。これが最後です」
『•••ナナミン』
「•••必ず幸せになってください」
『•••ナナミンもね。私よりも幸せにならなきゃ』
「•••あの人にとんでもないことされたら、その時は私が貰いにきます」
抱きしめながら
私の髪を優しく撫でるナナミンは
本当に好きです、って呟いた
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作者名:すうぷ | 作成日時:2023年10月19日 12時