未来 ページ1
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『わ、パジャマのボタン取れちゃった』
「貸してください。縫いますよ」
『え、ナナミン裁縫もできるの?』
「ボタンを縫い付けるくらいなら」
『すごいなー。料理も掃除も完璧。裁縫もできるなんて、自立しすぎだよ』
「そんなことないです」
『何にもできないもん、私』
「得意な方がやればいいんですよ」
『私、得意なのないよ。料理も掃除もイマイチだし』
「わたしは、あなたがいなくなると何もできなくなります」
『へ?』
「あなたは私の太陽です。いなくなると、私は死にます。何もできなくてもいいです。私のそばにいるだけで。こうやって頼ってくれるあなたも、すきです」
ナナミンはいつだって
ストレートに気持ちを伝えてくれた
優しくて、紳士的で
私のことを大切にしてくれた
「でも、このパジャマ。買い替えるのも良さそうですね」
『確かに。ずっと着てるもんね』
「次の休みの日、買いに行きますか。あと、同棲に必要な家具も見ましょう」
『やったー!たのしみ!』
ネイビーと淡いピンクの
チェック柄のパジャマ
色違いの腕時計
2本並んでる歯ブラシ
大きめなシャツ
私がプレゼントしたネクタイ
あまりにも
私たちの日常に馴染みすぎていた
「この家、裁縫箱あるんですか?」
『簡易的なものなら、あるよ!でもね、寝室のクローゼットのずっと奥。それか、引き出しにポイっていれたかな?小さすぎて覚えてないや。あ、取ってくるから待ってて』
「いえ。怪我したら危ないので私が探します。着替えてください」
『ありがと、ナナミン』
年末に放送されるテレビを
2人で見る約束をしたのも
来年のお花見は
違う公園で見る約束をしたのも
来年こそは
浴衣を着て花火大会に行こうねって話をしたのも
全部、全部本当だったの
『あれ?なかった?』
「•••すみません。見つけられませんでした」
『私見てくるね』
「いや!•••どうせ買うんですし、このまま処分しましょう」
当たり前にくると思ってた未来を
信じて疑わなかった私は
ナナミンのちょっとした表情にも気づかなかったし
奥の奥にしまっているその
存在も
完全に忘れてしまってたんだ
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作者名:すうぷ | 作成日時:2023年10月19日 12時