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...
帰ろう。
広臣が待ってる部屋に。
オートロックを開錠してエレベーターの方に行くとボタンの横でしゃがんでいる人。
目の前に行くとその人は私を見上げた。
「誰か来たらどうすんの?」
「こんばんはー。って挨拶するかな。」
「ボタン押してたの?上の階の人困ってるかもよ?」
「大丈夫。誰も押さないようになってんの。こういう時って大体そう。」
「三代目にもなるとエレベーター止めれるんだね。」
「なんかちげーけど、それでいいや。」
そのまま私の手をひいてエレベーターに乗り込み、扉が閉まったと同時に抱きしめられた。
「...なんで?」
なんにも言わない。
黙ったまま。
だけど伝わるぬくもりだけでもう胸がいっぱいだった。
「だめだよ...。」
そう言いながら、視界が涙で曇っていく。
トオルのこと傷つけて、それでもこの人が大好きで大好きで、意味わかんないくらい大好きで。
「たぶんね、俺の好きな子こういう時泣くんだよね。」
私の頭に顎を乗せてそんな事を言う。
「俺、ずっと前からその子の事知ってんだけどなんかいつも1人で頑張ろうとしてんの。もっと周りに頼れって思うわけよ。」
独り言みたいに話すからおかしくて涙は止まらないのに笑えてきちゃって変な感じ。
丁度、エレベーターが開きそうになって慌てて離れた。
「先に入ってて。」
顔がぐちゃぐちゃなのもあって下を向いたままそう伝えると、ん。と部屋に向かって行った。
少し気持ちを落ち着かせるために踊り場に出て空を見上げた。
大きな月が今日も輝いている。
私の大好きな月。
でも、もう手は伸ばさないよ。
もう迷わない。
私が手を伸ばすべき人は彼しかいない。
遅くても、遠回りでもなんでもいいや。
何度もバッドエンドを迎えた物語を今度こそはハッピーエンドに変えてみせるから。
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あお(プロフ) - meguさん» ご丁寧にありがとうございます。meguさんはとっても嬉しいお方ですね。そんな方に読んでいただけて嬉しいです。今後もよろしくお願いします。 (2021年2月6日 4時) (レス) id: e7291e172f (このIDを非表示/違反報告)
megu(プロフ) - 誤解をさせてしまったら申し訳ありません。更新のスピードは気にしていません。それよりお話の内容の方が大切ですから。久しぶりにドキドキする、大好きだなと思える小説に出会えました。本当にありがとうございます。あおさんのペースで書いてくださいね。 (2021年1月19日 18時) (レス) id: f00810db22 (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - meguさん» コメントありがとうございます。そんな風に言っていただけるなんて嬉しくて泣いちゃいそうです。更新の遅さは本当にごめんなさい...。頑張りますのでお付き合いいただけたら幸いです。 (2021年1月19日 17時) (レス) id: e7291e172f (このIDを非表示/違反報告)
megu(プロフ) - 更新が遅かったとしても、読んだらそんなこと忘れてしまうくらい切なくて苦しくて、でもきゅんとする素敵な作品をありがとうございます。最後まで大切に読ませていただきます。登坂さんをこんなに素敵に描いてくださること、とても嬉しいです… (2021年1月19日 2時) (レス) id: f00810db22 (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - ユキさん» こちらこそありがとうございます。全然更新出来なくて本当に申し訳ないです。 (2020年10月26日 16時) (レス) id: 652c381dd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あお | 作成日時:2020年6月22日 12時