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...
「無償の愛ってやつ?」
「めっちゃ格好いい言い方するね。」
「でもさ、それって臣さんの気持ちガン無視じゃない?」
少しだけ怒りが混ざったような声色。
こうやって核心をついてくる剛典だからこそ素直に話せたりするんだけど。
「...無視かもね。でもあの人はボーカリストだよ?別れすら糧にして成長につなげてくれるって信じたの。ほら、たくさん恋しないといい歌は歌えないって言うでしょ?」
「なんだよそれ...、まじで無償の愛じゃん。」
独りよがりな私の想いはそんなにいいもんじゃないけど、なにか変えなきゃいけないと思ったのは確かな真実だった。
「とか綺麗事言っちゃって本当はあの人にとって忘れられない女でいたかっただけかもよ。レコ大とった俺に別れを告げる女って事で相当記憶に残るでしょ?」
「え、どっちどっち。」
「どうだろうねー、なんてったって私メンヘラだからさー。」
納得したのかわかんないけど深く突っ込んでこなくてケラケラ笑ってる。
結局、茶化しちゃったけどこうやって言葉にするとなぜだかすーっと楽になった。
あの時の決断が正解だったどうかはわからない。
だけど、腐ることなく輝き続けてくれた。
別れた後に聞いた曲も、こんな歌い方するんだ...、って純粋に感動した事も、私の存在が少しでも彼の中のなにかを刺激しているんだと思うと意味のある別れだった。
彼を知らなかった頃の自分に戻れなくなったのはとんだ誤算だったけど。
「前にもう大丈夫だから戻ってきたって言ったじゃん?あの時は本当にそう思ったんだけどやっぱ全然だめ。」
「当たり前っしょ。誰だと思ってんの?あの登坂広臣だぞ?」
そう言って笑う剛典。
自信満々に言い切るから私もおかしくて一緒に笑った。
「同じ人と何回も恋するなんてそんな奇跡ある?大事にしなよ、その気持ち。」
背中を押してくれるような言葉とほっとするような笑顔。
ここぞという時にいつも救われてる。
「ありがとう。」
何回言っても言い足りないや。
...
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あお(プロフ) - meguさん» ご丁寧にありがとうございます。meguさんはとっても嬉しいお方ですね。そんな方に読んでいただけて嬉しいです。今後もよろしくお願いします。 (2021年2月6日 4時) (レス) id: e7291e172f (このIDを非表示/違反報告)
megu(プロフ) - 誤解をさせてしまったら申し訳ありません。更新のスピードは気にしていません。それよりお話の内容の方が大切ですから。久しぶりにドキドキする、大好きだなと思える小説に出会えました。本当にありがとうございます。あおさんのペースで書いてくださいね。 (2021年1月19日 18時) (レス) id: f00810db22 (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - meguさん» コメントありがとうございます。そんな風に言っていただけるなんて嬉しくて泣いちゃいそうです。更新の遅さは本当にごめんなさい...。頑張りますのでお付き合いいただけたら幸いです。 (2021年1月19日 17時) (レス) id: e7291e172f (このIDを非表示/違反報告)
megu(プロフ) - 更新が遅かったとしても、読んだらそんなこと忘れてしまうくらい切なくて苦しくて、でもきゅんとする素敵な作品をありがとうございます。最後まで大切に読ませていただきます。登坂さんをこんなに素敵に描いてくださること、とても嬉しいです… (2021年1月19日 2時) (レス) id: f00810db22 (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - ユキさん» こちらこそありがとうございます。全然更新出来なくて本当に申し訳ないです。 (2020年10月26日 16時) (レス) id: 652c381dd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あお | 作成日時:2020年6月22日 12時