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...
咄嗟に掴まれた手首はパッと離され、すみませんと謝る彼。
今度は隣どうぞとベンチをポンポンと叩いている。
いや、私これから仕事なんだけどな。
まぁ少しくらいならいっかと彼の隣に腰を下ろす。
「マスク、サングラス、深く被ったバケットハット。ここは事務所のすぐ近く。アーティストさんじゃなかったらただの変出者だと思うんです。あ、さっきのお答えです。」
一瞬、頭の上に？が浮かんだように首を傾げるが、すぐに肩を揺らすように笑いだす彼。
「はははっ、確かに。」
豪快に笑う人だな。
つられて笑っちゃうわ、これ。
「どう見ても怪しいっすもんね、俺。」
そう言ってマスクを顎まで下ろし、サングラスを取る彼。
イケメンというやつです。はい。
そして私でも知ってるイケメンです。
「三代目の登坂さんでしたか。」
「おっ、俺の事知ってました？」
「ぎりぎり。」
私の返事にまた大きな口をあけてはははっと豪快に笑う。
笑い上戸なのかな？
イメージと違うな。ってかそもそもあんまり知らないんだけど。
少しの時間だけど、他愛もない話をした私達。
この辺でおいしいランチのお店を教えてくれたり、川沿いの桜の絶景ポイントはどこどこだとか、ゆっくりと時間が流れていくのがわかる。
登坂さんの声はとても心地いい。
「今から言う事はほんと俺の独り言だと思って聞き流してくれます？」
「その前置きどうかと思いますが、どうぞ。」
確かに。と言って笑う彼につられて私も笑う。
「うまく歌えないんだよね。うまくうまくって思うほど声が出なくて。時間が待ってくれるわけじゃねーし、俺が悩んだところで新曲の発売日はくるし。気持ちを込めてもこんな俺がなにを届けられんのかな？」
言い終えるとさっきまでの笑い方とは全く違う乾いたような声で笑ってみせた。
両手を膝の上で組んで下を向く彼。
「私も独り言言います。音楽って正直生きていく上で必要のないものだと思う。なくてもいいけどあると心が豊かになる。嬉しいとき、辛いとき、気づくとそこにあって。生みの苦しさは計れないけれど...あー三代目の新曲楽しみだなぁ。」
「メンバーの名前言えないくせに？」
またはははっと笑って、いたずらっ子のような顔で私を見る。
「あ、独り言なんで気にしないでください。」
ありがとうと呟く彼の横顔はとても綺麗だった。
...
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あお(プロフ) - shireyさん» コメントありがとうございます。満足していただけるように頑張ります。 (2019年12月18日 11時) (
レス) id: a6fdefa27b (このIDを非表示/違反報告)
shirey(プロフ) - 話が面白くて続きが楽しみです((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2019年12月17日 23時) (レス) id: eae9c1c1ca (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - みーやんさん» コメントありがとうございます。かなりゆっくりになると思いますが最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。 (2019年12月8日 0時) (レス) id: a6fdefa27b (このIDを非表示/違反報告)
みーやん(プロフ) - 初めまして！一気読みしてストーリーの純粋さが気に入って登録させて頂きました笑グイグイ行く岩田ｻﾝいいね〜私は臣くん推しだからこの先が楽しみです。焦らずゆっくりと素敵な作品作ってくださいね、更新お待ちしております (2019年12月7日 20時) (レス) id: fc5b4935bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あお | 作成日時：2019年11月26日 23時
