─鏡越しの想い ページ4
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顔も見ずにオレの感情が読みとれたのか、彼女は水面に目をやったままだった。
YS「‥泣くわけないじゃん。」
その言葉にドキッとしたあと慌てて目元を拭う。涙は出てない、はず。
SA「何かあったんですか？私に話して‥」
YS「何もない。過去の思い出に浸ってただけ。」
SA「過去？‥何かあったんですか？」
強引に顔を覗き込んで来たソアに少し嫌悪感を抱いた。
"うるさい"
"オマエにオレの何が分かる？"
思わず吐き出しそうになった言葉を飲み込んだ。
女の子にそんな言葉は使うべきじゃないから。
‥それにしても、どうしてこんなにしつこくオレのことを気にかけるんだ‥？
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しばらくの沈黙の中、自分の心を落ち着けていると、ソアは「あ」と思いついたように、こちらに向き直って言葉を発した。
SA「ねぇイェソンさん。私と付き合ってみませんか？」
じっくりと目を合わせたのは初めてだったかも知れない。
いつも彼女にメイクして貰ってるときは、スマホゲームをしてたり、本を読んでたり。
話しているときは、だいたい鏡越しだったから。
YS「‥どうして？」
SA「イェソンさんが、好きだからです。」
こんなに澄んだ瞳をしてたなんて知らなかった。
こんな表情でオレを見つめてただなんて、知らなかった。
その言葉の意味を頭で理解した頃には、ソアの唇は、オレの頬にあった─。
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SA「ちょっと、イェソンさん？聞いてます？」
ソアの大胆な行動に驚いて、理解することに時間がかかったオレは、しばらく固まったままだった。
数秒間ソアは頬に唇をつけたままで、オレの反応が余りにも"無"だったから、少し怒ったように顔を覗き込んで来た。
SA「イェソンさんがよく分かんない。ちょっとくらい、照れたりしてくれたって‥」
─オレは、こんな行動を平然としているソアの方が理解できない。
ムッとした表情で不満をこぼしたソアが顔を上げて、目を見開いた。
SA「あ。‥‥Aさん。」
彼女がその名前を呼んだ瞬間、慌ててその視線の先を振り返った。
──Aヌナ。
やっぱりいた。
今日の結婚式に来てないはずがない。
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作成日時：2023年5月28日 3時
