Pink Signal【YS】 (ページ12)

今日:5 hit、昨日:9 hit、合計:2,544 hit

─見惚れてしまうほどページ12

.

ユニット撮影のある日。
午前のスケジュールが終わってからマネージャーの運転する車で移動中、渋滞により到着が遅れてしまった。

急ぎ足で楽屋に入るとすぐにキュヒョンの姿が目に入った。
YS「悪い、遅れた‥」

キュヒョンをメイクしていたのは‥Aヌナ、だった。
ウンジヌナの同僚とだけ聞いていたけど、やっぱりメイクの仕事をしていたのか。

仕事で会うのは初めてだったから、どういう顔をしたらいいのか分からなくて。
キュヒョンのメイクをしていたAヌナは、ちらりとこちらに目を向けて「おはよう」と一言だけこぼした。

KH「イェソンヒョン、遅刻。俺もう準備できたけど。」
YS「うん、オレも急いでするから先行ってて。」
KH「‥先行っててって言われても。リョウクはどうせまだケータリングの弁当でも食べてるからなぁ‥。」

本当マイペースだよな、と愚痴をこぼしながら、入り口のすぐそこにあったソファに腰かけるキュヒョンは、おもむろに自分のリュックの中から厚みのある本を開いた。

‥ここに居座るつもりなのか。
オレのヌナへの気持ちを知らないキュヒョンは、どうやら二人きりにさせてくれる気はないようだ‥。

鏡越しにキュヒョンをじっとり睨みつけていると‥

「もう少し上向いて。」
いつの間にかAヌナは、メイクを始めてくれていた。
時間がなかったこともあって、手際よくメイクをするヌナに圧倒されて何も話せなかった。

──。

メイクも完成間近。
Aヌナはオレの正面に屈んでリップを塗り始めた。

まつ毛長いな、なんて思いながら目の前にいるヌナから目が離せなくて、真剣にオレの口元を見ていたヌナが突然視線を上げると、目がバッチリ合ってしまった。

「‥さっきから見すぎ。」
その言葉に、無意識に見つめてしまっていたことに気づいて途端に恥ずかしくなる。

相変わらず顔色一つ変えないヌナは、「完成」と言って満足そうに再び鏡越しでオレを眺めた。

KH「ヒョン早く。リョウク先行ってるって。」
キュヒョンに急かされながら、名残惜しくもAヌナに目線を送って楽屋を出て行った。

.