天然の女たらし* ページ48
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どうしよう、わたしももっと触れたいのに。
振り払ってしまった手を見ながら考える。
もう一回握って下さい?
そんな事恥ずかしくて言えない…。
「え、あ、ごめん‥なさい。」
ようやくわたしから出た言葉が、彼を傷つけているとも気付かずに。
さっき触れられた感覚が、まだ残ってる。
頬から耳にかけて、今までに感じたことのないくらいの熱い痺れが、じりじりと広がっているのを感じた。すこしの沈黙。
KH「ごめん、考え事してて手に力入れちゃっただけ。」
頭を掻きながら下の方を向いて笑う彼。
あ、何だ。勘違い。
それでも、失礼なことしちゃったな。
キュヒョンさんがどんな気持ちになっているのか、表情を伺おうとするも、暗くてあまり見えない。
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キュヒョンさんに連れられて、ワゴン車の前まで来た。
KH「外で見張ってるから、これに着替えて来て。」
キュヒョンさんは私物の服一式を、わたしに差し出してくる。
一般庶民のわたしは存じ上げないけど、恐らくハイブランドのものなんだろうな。
「え!そんな!借りれません!」
しかも‥だってキュヒョンさんの私服でしょ?
そんなのどきどきして着れないよ‥
どうしようと困っていたら「何でこんなに顔が赤いんだ?」って不思議そうに、至近距離でわたしの顔を覗き込むキュヒョンさん。
このひとは、わたしをわざとドキドキさせようとしてるんだ‥!!
キッと涙目で睨むと、きょとんとした表情の彼。
『キュヒョンさんの‥ばか!天然の女たらしだ‥』
彼に伝わらないよう、日本語で文句を言った。
わたしだけが翻弄されてるよ‥
何だか負けたみたい。
まだ知らない日本語だったようで、頭にクエスチョンマークを浮かべるキュヒョンさんを知らんぷりして、彼から服一式を受け取った。
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作成日時:2020年5月20日 19時