バラード歌手みたいに -KH- ページ35
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少しして、彼女に指定した噴水の前に着いた。
白いニットに白のデニム。
白と青が編み込まれた行儀の良いタータンチェックのロングコートに、お気に入りの淡いスカイブルーのマフラー。
まるでバラード歌手のようなマフラーの巻き方をして。
外出の際には、必須の黒マスク。
そしてヒョンから少し早めの誕生日プレゼントで貰った、黒のワークキャップ。
季節は1月も下旬。
凛とした空気が立ち込める夜空からは、初雪が降ろうとしていた。
「キュヒョン、さんですか?」
振り返るとそこには、俺が待ち焦がれていた彼女。
清潔感のある白いマフラーに、裏地がもこもこしたベージュのスエードのジャケット。
ネイビーのスキニーデニムに、ベージュと白が綺麗に組み合わさったリボンがワンポイントの、汚れの無いスニーカー。
ライトアップされた噴水の前で、そのライトを頼りに俺の顔を、緊張した面持ちで覗き込む彼女が居た。
さっきはスーパージュニアとロゴの入った、ネイビーのスタッフ用Tシャツを着ていて、それまでは白と朱色の衣装を着ている彼女しか見た事が無かったので、新鮮だった。
俺は彼女の私服を目に焼き付けながら、軽く手を振った。
「あれ?わたしキュヒョンさんに呼ばれてて‥ん??あなたは‥えーと、韓国人の‥
‥キュヒョンさん?あれ?ええっ!?キュヒョンさん!?」
KH『え?』
彼女は自分で言った言葉に、自分で驚いている様子だった。
こっちが「え?」なんだけど。
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作成日時:2020年5月20日 19時