触れていたい -KH- ページ19
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KH『大丈夫?』
ぺしゃんと座り込んでしまい、中々立ち上がる事の出来ない彼女に手を差し伸べた。
彼女は目の前にある俺の手の指先から手の平までじ‥っと見つめて、中々手を重ねようとしない。
KH『?‥早く。』
彼女が立ち上がれるよう差し伸べた手を、更に指と指を開いて近づけた。
促されてようやく眉を下げ、口をぎゅっとつむって、恐る恐る小さな白い手を俺の手の平に重ねた。
たまにするこれは、どういう表情なんだ?
ひやっとした彼女の手。
骨っぽくて、寒さで少しかさついていた自分の手に比べると、しっかり保湿されていて、柔らかくて冷たい彼女の手が気持ち良く感じた‥。
女の子‥なんだな。
当たり前の事を、今になって再認識した。
片手で引っ張って彼女を起き上がらせ、再びゆっくりと歩き始める。
俯いたままの彼女がぽそっと放った「ありがとう」の後に、しばらくの沈黙が続いた。
手はどちらとも離すことは無く、曖昧に空気を含んで重ねたままだった。
もう少しぎゅっと握って、触れていたい。
‥そう思ったけど、これ以上触れてはいけないような、触れたら壊れてしまいそうな‥そんな気がして、どうにも出来ずにいた。
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「もぉ〜キュヒョン!迷子になるなってあれほど言ったのに!」
ヒョンの声が聞こえた瞬間、どちらとも無く勢いよく手を離して、俺は頭の上に、彼女は自分の腰の後ろに不自然に手を隠した。
‥迷子になったのはどっちだよ。
2時間ぶりに目の前に現れた口うるさくてちっこいヒョンに、心の中で悪態をついた。
『Aちゃんもごめんね、迷惑かけて。』
『‥い、いえ、そんな。』
Aちゃん?
いつの間にそんなに親しくなったのか。
じり、と胸が焦げる感じがした。
お礼を告げて、離れ難いのに中々言葉にならず、お互い見つめ合うだけでその場を後にした。
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KH「さあ、ゲームやろっと。」
「お〜いこんな時までゲームか?」
一時間くらい電車に揺られてホテルに帰りシャワーを浴びた後、ヒョンと同部屋の自分のベッドに体を投げ、スリープモードにしていた薄型ノートパソコンをおもむろに開いた。
あれで良かったのか?と、自分の行動を振り返っては溜息を吐きながら、悶々とした自分の気持ちの整理をする為に目の前の画面に没頭した。
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作成日時:2020年5月20日 19時