aphrodisiac (ページ26)

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西「ちょっと後ろ向いてみ。」

渡されたネックレスの箱を開けてチェーンを外す。

言われた通り後ろを向いた彼女の首からマフラーを外し

ネックレスを引っ掛ける。

「え、ちょっと西島さん。」

黒のタートルネックの上に

煌びやかに輝くネックレス。

西「会いたくなかったのは返したくなかったから、って

思ってもい？

俺は、茉白さんに会えたし、ネックレスも

プレゼントできた。」

俺の言葉にキョトンとする彼女の顔が可愛い。

西「なんにもお互い嫌な気分じゃなくない？」

俺がそう言って笑いかけると

また大きな目に涙が溜まる。

西「わ、泣かないで！

どうしていいかわかんない。」

困ったようにそう言えば必死で涙を拭いた。

「ありがとう、ございます。」

西「いつから待ってたの？」

「1時間くらい…」

西「え！そんなに待っててくれてたの？」

なんでさっき出てくる時見えなかったんだろう。

K「にっしー？」

タイミング悪く出てきたkazuki。

西「あ、ちょっと待って。

kazuki先行ってて。」

俺が慌ててそう言うとkazukiは

ニタニタしながらビルの中に消えていった。

西「はぁ、タイミング悪すぎ。」

「ごめんなさい」

西「いや、茉白さんは悪くなくて。」

ビルの陰にいるものの、退勤する社員が

行き来してるのが今更気になってしまう。

西「ごめん、ちょっとこっち来てくれる？」

彼女の細い腕を引っ張って意を決して

ビルの中に入って人気のない奥の会議室へ向かった。

「ごめんなさい、

西島さん…そう言えば芸能人だったのに。」

静かな4人入れる会議室に入るとまた申し訳なさそうにした

西「いいの、いいの。

会いに来てくれたの嬉しいよ。」

そう言えば芸能人、って言葉も

今の俺には嬉しかった。

ひとりの人間として見てくれる人が

世の中に今はあまりいないからだ。

こんな事言えば天狗だと言われるのかもしれないけど

茉白さんの俺を見る目は間違いなく、

芸能人の西島隆弘を見る目じゃなかったから。

「こんな立派な会社、初めて入りました。」

少し落ち着いたのか微笑む彼女の顔を見て

ほっとする。

あぁ、完全に惚れてんなぁ、ってちょっと自分が嫌になる。

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