aphrodisiac (ページ11)

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｢どうも、さっきぶりです。｣

俺の顔を確認して、ハッとする彼女。

『ごめんなさい、拾っていただいたのに。』

｢いえいえ、怖かったですよね。

おれも声のかけ方考えれば良かったな、｣

って、少し反省。

｢お店以外で会うのは初めてですね。｣

このまま別れたくなくてまた当たり障りのない会話。

『マフラー』

答えになっていない返事と、

マフラーに触れた彼女が近すぎて鼓動が高まる。

｢あ、うん。さっそく巻いてみた。

めちゃくちゃあったかい。｣

ずっと巻いてるマフラーに顔を埋めると

笑顔になってないのに頑張って微笑んでいた。

｢なんか、あったんですか？｣

聞かずには居られなかった。

俺がそう言うと彼女の目が潤んだ気がした。

『なにも、ないですよ。』

思わず抱きしめそうになる。

｢おうち、帰るんですか？｣

『はい、今から帰ります』

｢危ないから送りますよ｣

本音だった。

彼女もそれに素直に応じてくれた。

｢俺、ちょうど仕事の合間だったんですよ。｣

『遅くまでお疲れ様です。』

それ以降の会話はなかった。

『ここです、』

｢え、ここなの？｣

都内でも1.2を争うであろう高級マンション。

女の子1人暮らしでこんな家住まないよな。

勝手な偏見だけど、

俺の心の中はモヤモヤと渦巻いていく。

｢A！｣

エントランスの方から聞こえる男の声。

｢どこ行ってたんだよ、探しただろ。｣

あぁ、やっぱり。

こんな形で俺の片思いが終わるなんて。

それにしても、この男酷くないか？

何があったか知らないけど女の子がこんな夜中に

1人で出歩くなんて相当な事があったんじゃないかって

1人でぐるぐる考えても仕方なくて。

｢じゃあ、またね。｣

そう言って踵を返した。

『待って、』

彼女が小さく引き止める声が聞こえたけど

きづかないふりをした。

『西島さん！』

男の腕を振りほどいて走ってくる彼女。

｢おわ、ど、どうした？｣

さすがにびっくりで飛び込んできた彼女を支える。

『ありがとう、ございました。』

振り絞った声。

彼女の目から一粒の涙が零れた。

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