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｢すごい、｣
田舎育ちの私にはまだまだ東京の景色は見慣れない。
こんなに素敵な風景を独り占め、いや、隆くんと
2人で見つめてる高揚感に胸がいっぱいになる。
西｢いいでしょ。｣
隆くんは手すりに頬杖をついて
私を見て微笑む。
｢うん！ありがとう、隆くん。
めちゃくちゃ綺麗。｣
写真なんかより目にしっかり焼き付けたくて
辺り一面キョロキョロ見渡す。
西｢はは、めちゃくちゃ観察するね｣
風になびく隆くんの前髪が目にかかった。
｢だって、こんな綺麗な場所なかなかないよ！｣
私がそう言うと隆くんがグッと距離を詰める。
｢ん？｣
鼻がくっつきそうなその距離にまだやっぱり慣れない。
私の長い髪が風に揺られて2人の間でなびいている。
西｢ごめんね、｣
｢え！？｣
どうして隆くんが謝るのか分からない。
西｢ほんとはもっともっとAの喜ぶ顔、
見たいし連れていきたいところもたくさんあるのに。｣
隆くんはおでこを合わせて
目を閉じて悲しそうに言った。
西｢周りの目気にしなきゃいけないから。
こんなとこしか連れて行けなくて、｣
なびく私の長い髪をすくって
私の耳にかける。
隆くんをぎゅっと抱きしめる。
｢なんで、｣
西｢…｣
｢私、隆くんがいれば何も出来なくても
ほんとに幸せだよ？｣
もう一度隆くんの顔を見上げると
少し目にかかる長い前髪から覗く寂しそうな目。
｢こんな素敵な場所教えてもらえたし。
毎日、毎日、怖いくらいしあわせ。｣
前髪に指を伸ばして夕日に照らされた蜂蜜色の目を
見つめる。
｢隆くん、だいすきだよ。｣
初めて私からキスをした。
隆くんは少し驚いたような顔をした後に
またくしゃっと笑った。
西｢ねぇ、だからズルい。｣
私の頬を摘んでニカッと笑う彼の目から
もう寂しさは消えていた。
｢いつもズルいの隆くんだもん。｣
隆くんの胸に顔を当てると心地よい鼓動が聞こえる。
西｢あー戻りたくねぇ。｣
隆くんはぎゅっと私を包み込む。
｢ダメだよ！さっ、行くよー！｣
隆くんの胸から体を離して扉に向かって走り出す。
西｢あ、待ってずるい！｣
．
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作者名：ma2894am | 作成日時：2021年11月3日 22時
