- 恋愛掌編 - 【ars K.N】 (ページ5)

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- 秘密の恋人 - ページ5

深夜１時、私はテーブルの上に置かれたスマホと向かい合っていた。

　お風呂から上がったばかりの身体はまだ熱を保っている。

　どうか冷めない内に早く着信が鳴らないものか…と、濡れた髪の毛をタオルで拭っていた時だった。

"～♪"

　着信音が部屋に響く。
　あんなにも待っていたこの電話を、私は冷静に眺めていた。

　まずは深く息を吸って、ゆっくりと吐き出す。そしてちょうど３コール目で、私は電話に出るのだ。

「……はい」
『いつも通り、３コールで出るんだね』
「そう…決めてるから」

　いつからだろう。こうして毎週末、名前も知らない彼と話をするようになったのは。

『怖くないの？…俺の事』
「全然平気よ。だって…貴方の声が、好きなの」

　見知らぬ番号からの着信に応えたあの日、私の耳は彼に奪われてしまったんだ。

「それに貴方は…私を満たしてくれるでしょう？」

　ベッドに横たわり、快楽を求め彷徨い始める自分の指先…。

　零れ落ちる吐息が通話口に流れると、彼は蠱惑的な声で微笑み返した。

『ふふ……だめだよ、まだイカせない』
「私、どうかしてる…だって貴方の声を聞くだけで…」

　私の一部は熱を帯び、密を溢れさせてしまう。

『ねぇもっと触って。ほら…キスしてあげるから』

　いやらしいリップ音が私の耳を襲って、抑えきれない喘ぎが空中に吐き出された。

　そして欲望のままに動いていたこの指先を"生温かい中"へと滑らせると、私の快楽はピークを迎える。

「あぁ…だめっ………」
『………』

　果ててしまった私の吐息が収まるのを、彼は静かに待っていた。
　どこの誰かも分からない貴方に、今夜もまた、満たされて。

「……おやすみなさい」

　秘密の、恋人。
　私はまた一週間…貴方を想いながら日常を送る。