恋愛偏差値〇〇です！【問答打】

こっちを向いて　ko×ymmt ページ8

ko→ymmt ※悲恋
(ymmtさんには彼女がいる設定です)

ko side
「ねぇ、こうちゃん、これ見て！」
と山本さんは、文房具を見ていた俺へと手を見せびらかしてきた。なんだ、と思って覗いてみると、山本さんの手に握られているのは、可愛くて小さな、ふたつの熊のキーホルダーだった。

今、俺らは雑貨店にいる。山本さんと、一緒にどこか買い物に行きたいね、と言って選んだ場所だ。久しぶりにふたりで遊べると思っていたのだが、山本さんはさっきまでずっと小物売り場から離れることがなかった。
「どうしたんですか？これ」
こういうものは、普段、山本さんが自分から買うものではないはずだ。可愛いものは好き、と言っていたが、ふたつもある意味がわからない。

すると、彼は頬を赤らめながらこう言った。
「実はさ、彼女にプレゼントしようかなって思って」
･･･あぁ、まただ。
山本さんは、現在付き合っている彼女のことをいつも一番に考えている。
しかも、自分のことよりも相手のことを優先してしまうくらい、依存していて、愛している。
今回もそうだ。本来ならば、山本さんの欲しいものを買うはずの買い物なのに、そのお金を彼女へと注ぎ込んだ。そして、お金を支払った彼はいつも、幸せそうにしている。
彼女がそのプレゼントをどうしているのかわからないが、山本さんが何回も渡すということは、使ってもらってはいるのだろう。

･･･しかし、そのことが俺にとっては喜ばしいことなのか、辛いことなのか、自分でもよくわかっていない。
山本さんが幸せならいいなとは思うが、その一方でその彼女への嫉妬心を持っている自分がいる。
もしかしたら俺は、山本さんに彼女と幸せになって欲しい、なんて思っていないのかもしれないな。
考えてみると、彼女への嫉妬心の方が大きいのは紛れもない事実なのだから･･･。
そうこう考えているうちに、山本さんは会計のためレジへと向かっていた。

「･･･好きですよ、山本さん」
と、ひとり呟いてみる。しかし、その声は届くはずもなく、雑音によってかき消されていった。

ねぇ、山本さん。こっちを向いてよ。

その笑顔を、俺にも見せてよ･･･。

･･･なんて直に伝えられないほど、意気地なしな俺は、今日もその言葉を心の奥にしまい込んで山本さんの元へと歩き始めた。

ｰｰｰ
こういう悲恋系も、大好物です。

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