黒猫と黒鴉 ページ35
『シリキウトゥンドゥ様にはJさんの所に戻れって言われてたけど…もうちょい探索したい…!』
と、言いながら自分は階段を登っていた。
登りきった先には屋上の扉。
『屋上か〜…見てみよっと、』
そう言い、扉を開けると軋む音が響いた。
瞬間、突風が吹き自分は驚き目をギュッと瞑り、腕で顔を覆った。
ピタリと風が止み、恐る恐る腕を顔から離し目を開く。
『…綺麗……』
目を開き直ぐに見えたものは、背中から漆黒の翼を生やしたとても美しい男だった。
その男は此方に気付いていないのか、空に浮く真ん丸とした大きな月を見上げていた。
その姿に見惚れていると、其の男が自分の方を見た。
「ウェルウェル…私を見ていたのは君かな?」
『…え、あ…はい!!』
「ふふっ…そうか、所で君は誰だい?」
『あ、自分の名前はルーファって言います!…あの、貴方のお名前は…?』
「私の名はマルフィ、あの高貴なマレフィセント様に付く者さ。」
マレフィセント。
其の者の名はヴィランの世界では誰もが知っており、とても、恐れ、慄かれているヴィランだ。
『だから…マルフィは美しいんだね、』
「当然さ!!何せこの私はマレフィセント様の手下だからな!」
と、胸を張って言うマルフィに少し、ん?となったが気の所為だろう。
『あの…所でどうして此処で月を見てたんですか?』
「美しい私が何故月を見ていたかって?…違うさ、私が月を見ていたんじゃない、月が美しい私を見ていたのさ!!」
その言葉と同時に自分は気付いた。
この人は俗に言うナルシストだ、と言う事に。
『あ、あはは〜…そ、そうなんですね……あ、其れじゃあ自分は此れで〜…!!!』
と、逃げるように屋上からホテル内へと戻っていったルーファに、マルフィはまたいつか、と手を振っていた。
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作者名：たにしちゃ | 作成日時：2022年9月29日 17時
