医者と人外と[d!] (ページ9)

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話を聞いてた限り、どうやら此の人間の名前はAと言うらしく俺が上位の人外だと言う事が予測出来ていなかったらしい。

俺が何故倒れていたのか聞いてきたAに事を話せば適当に促し始めた挙げ句踵を返して逃げようとするじゃあないか。

「(こんなにも面白い人間をそう安々と離してたまるか。)」

好奇心と逃すわけには行かない、と言う思いでAを持って空高く飛べばさてどうだ。

全く怯えておらず其れどころか俺に近付いた時点で死ぬ覚悟はしていたらしいじゃあ無いか。

面白い。

そう思いながらAを持った儘飛んでいると傷口が開いたのか激痛が走った。

意識が朦朧とし始め、翼もはためかせられる体力は無くただ真っ直ぐ落ちて行く中、Aが俺に力強く抱き着いて来たのと同時に何故か力が微妙に湧いた。

何とか其の力を使ってギリギリの所で翼をはためかせて無事に地面に着地したが、もう、一切立てる力や気力は無い。

蛙の潰れたような声が聞こえたかと思えば其処で、俺の記憶は途切れた。

目を覚めせばもう日差しは傾いており、俺の下には人間のAが居た事から下敷きにして眠ってしまったのだろう、と俺は瞬時に理解した。

恐る恐るAの顔を覗き見れば気持ち良さそうにすやすやと寝息を立てながら眠っていた。

…幾ら殺す気が無いからと言って無防備に男の下で寝るAに何故か一瞬モヤッとしたが気にせず俺は其処らへんに落ちている木の枝を集めては火を付けた。

食料はAの持っているショルダーバッグに何個か入っていた為、取りに行くことにならなくて安心した。

……黙っていれば人形と言われても違和感が無い程に綺麗な髪に整った顔のAに1つの疑問が浮かんだ。

何故こんな何処かの令嬢の様な美貌を持った人間が如何にも盗賊のような見た目をしてこんな森を彷徨っていたのだろうか。

仮に此奴が俺が潰そうとした国に居た者だとしたら別国に私情で行くと言っても許可は降ろされない筈だ。

…考えれば考える程謎が浮かぶAに一瞬計り始末したほうが良いのでは無いかと内なる警報が鳴ったがAには手当をしてもらったと言う恩がある。

恩を仇で返すのは流石に…と思い俺は内なる警報を無視した。

日が完全に落ち暫くしてAは目を覚ました。

勢い良く起き上がったAに一瞬吃驚したが下敷きにして眠った事を謝ればAはチクチクと痛い所を付きながら話をしたかと思えば傷口を見せろと要求してきた。