医者と人外と[d!] (ページ29)

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そんな疑問で頭が埋め尽くされながらも少女を見る。

『…あの、どうかなされました…？』

「トン氏！どうだ！俺の言った通り、魔力が安定しただろう？」

「…確かに、安定したで？けど…何でやろな、どっか既視感を感じる、と言うか…」

そもそも此の少女の所有物であるローブを着てから少し分かった事だが、何故か魔力が安定するのと同時に何処か既視感を感じるのだ。

だが、何故か其の既視感が思い出せない…嫌、分からないのだ、

「…矢張、トン氏も既視感を感じたか…、」

「っちゅう事は言わへんかっただけで、グルさんも感じ取ったんやな、」

考えながら顔を合わせる俺らを見て疑問を持っていると感じさせる表情で首を傾げる少女。

「ちょっと聞きたいんやけど、此のローブ何処で手に入れたん？」

『…貰いました、育手の人から…、』

「育手の人？…其の育手の人の見た目とかって、覚えとる？…あぁ、思い出したくないんやったりするんなら無理に話さんでもええで、」

育手の人、と言った少女の顔と雰囲気が何処か暗くなり、もしかすると余り良い記憶がないのでは…？と、配慮をした上で俺は言ったが少女は首を横に振って言った。

『…確かにずっと、一緒に居た筈なんですけど…覚えて、ないんです…姿も、どんな人だったのかも…けど声だけは少し、覚えてるんです…でも、深く思い出そうとすると、声も忘れて行っちゃう気がするんです…、』

「…そうなんか、なら…別にもう言わんでええよ、」

少女の頭を撫でながら言うとグルさんと少女は一瞬驚いた様な表情をしたが少女はすぐ、何処か嬉しそうに目を細めて微笑んでいた。

「…トン氏、お前……」

「？何や？グルさん、」

「…嫌、お前そんな表情が出来たんやな、」

…グルさんの言う取る意味はよく分からんかったが、取り敢えず余り良い意味では無いと言う事が分かった。

『…オーク様、あの…手、そろそろ退かして貰っていいですかね…髪の毛が、』

「！…す、すまん…！！」

慌てて手を退かすとグルさんが面白可笑しそうにゲラゲラ笑い始めた。

『…オーク様、取り敢えず其のローブは貸しますけど…無いとは思いますけど…、グルッペン様見たく安定したと言うのに返さない、何て事は止めてくださいね…？』

「そんなんせぇへんから、…其れと、俺はオーク様ちゃう、トントンや。」

『…トントン樣、お名前は御存知でしたが…改めまして、私の名前はAです、宜しくお願いしますね、』