医者と人外と[d!] (ページ28)

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聞いていない、と言うようにグルさんを見る少女にグルさんは苦笑いをしながら焦った声色で言った。

「トン氏…！別に今其れ言わんでもええやろ…！」

『…グルッペン、オーク様の話が本当なら、直ぐに脱いで其れ、オーク様に貸して欲しいんだけど…』

そう言いながらグルッペンのローブを引っ張る少女に少しばかり肝が座ってるな…と、思って眺めていた。

『グルッペンさん…！脱いで下さい…！！』

「嫌や！此れ着とると、何でか知らんけど魔力が安定すんねん！！」

ギャーギャー騒ぎながら恐らく少女の物と思われるサイズの大きいローブを脱ごうとしないグルさんに俺は呆れながらグルさん、と声を掛けた。

「幾ら何でも、人間の…しかもグルさんより小さい少女のローブ着て、脱ぎた無いって叫ぶのはどうかと思うで…」

「嫌、トン氏！お前も此れを着たら絶対脱ぎたくなくなるゾ！？ほら！着てみろ！！」

そう言って自らローブを脱いで俺に押し付けてくるグルさん。

嫌々…そもそも何で俺がこの少女の所有物であるローブを着なあかんねん…其れに、此れを着とったグルさんもグルさんで頭土地狂っとるちゃうんか…？

と悶々と考えていると少女は口を開いた。

『…着ても大丈夫ですよ、ただ変に破いたりしなければ、』

「嫌、此のサイズやと…俺が着ても大丈夫やと思うけど、君は良いん…？俺…人外何やけど、」

少女は首を横に振って凛とした表情で真っ直ぐな視線を俺に向けて言った。

『人外だから、何ですか…？別に、ただ凄い力を持って普通の人とは違った種別で生まれただけで…私は、貴方を…嫌、人外と言う生き物全てを嫌ったり何てしませんよ…寧ろ、人外と人間の皆が仲良くして欲しいくらいです…し、』

何て叶いっこない、幼稚な子供が言うような夢を言った少女に俺は少しばかり驚いてしまった。

何故か、此の少女には其の未来が作れるのでは無いか、と思ってしまったのだ。

他の奴らが知ったら多分、真っ先に正気を疑ってくるんやろうけど、此の少女からはまるで其の夢は自力で叶えるんだ、とでも言うような何処か自信のある…嫌、まだ不確かやけど俺の本能がそう感じ取ってる気がした。

「…そうですか、まぁ…きっと君になら出来るんとちゃいますかねぇ、」

何て何処か他人行儀に言いながら少女のローブを着ると確かに僅かに不安定だった魔力が安定した様な気がした

…やけど、何で此の普通そうな少女がそんなローブを持ってるんや…？