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｢私が練習生の時の話はしたよね？｣
私がそう聞くと、イーシンは黙って頷いた。
｢練習生の頃から今まで、すごく長くて。そろそろ自由になりたかった、普通の人間として生活したいって思ったの｣
｢･･･そっかぁ。Aは僕達より辛い思いしてきたしね｣
そう言って私の頭をそっと撫でる。
イーシンの手、意外と大きいなぁ。
｢僕も1つ、Aに話してなかったことがあるんだけど｣
｢え？なに？｣
なんだろう。ちょっとドキドキする。
｢これから同棲しよっか？｣
｢･･･はい？｣
どういう話の流れなのよ･･･
｢実は僕もちょっと前に宿舎出るって決めてたんだ〜だから丁度いいと思って｣
いやいやいや。
嬉しいけど話が飛躍しすぎてついていけない･･･。
｢Aはどう思ってるのか知らないけど｣
｢うん？｣
イーシンは私の腰に腕を回してぐっと引き寄せると、軽くキスをした。
そして、ふわっと微笑むと。
｢絶対Aと結婚する気でいるから。離さないからね｣
｢･･･待って無理泣きそう｣
私が本当に言って欲しかった言葉。
今、イーシンが全部言ってくれた。
｢本当に？私でいいの？｣
私が涙目でそう聞けば、
｢当たり前でしょ。むしろAがいい｣
と言ってギュッと抱き締めた。
ふわっとイーシンの匂いに包まれて、
幸せな気分に浸る。
私、幸せだ。
｢というわけで僕とAは宿舎出るからぁ〜｣
｢えー！？｣
｢イーシン、皆に言ってなかったの？｣
｢うん、先生には言ったけどね〜｣
なんとイーシンが皆に言ったのは宿舎を出る当日。
｢よし、A行こっか｣
と差し出された手。
｢うん｣
その手を取り、長い時間苦楽を共にした仲間達と別れる。
｢皆、またね！｣
私がそう言うと、皆笑って手を振ってくれた。
本当に幸せです。大袈裟かもしれないけど、生きててよかった。
これからの生活に期待を膨らませる。
今日から私はごく普通の女になった。
いや、ごく普通ではないか。
｢A？行くよ〜｣
とても幸せな女性になりました。
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作者名：ゆら | 作成日時：2017年3月31日 1時
