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「私の初恋はね、ピアノコンクールで出会った男の子なんだよね。」
「へー。たまちゃんじゃねえの?」
「違うよ?仲良しだったけどお友達。それに裕太くんは人と競うのが嫌いだから、コンクールにはいつも不参加だったもん。」
「あぁ、ちょっとそんな感じするわ、あいつ。順位とか興味無さそうだな。」
「そうそう。」
心優しく穏やかで平和主義な裕太くんは、人と競うことや争うことをなによりも嫌っていた。
誰かと比べたり人より上手く弾きたいとかそんなんじゃなくて、純粋にピアノが上手に弾けるようになりたいって思ってる男の子だった。
でも、私は違った。
なにがなんでも一番になりたかったし、コンクール で大賞だって獲りたかった。
「別の教室の子なんだけどね、その子が毎回、最優秀賞なの。すっごく上手くて私はいつも優秀賞で、最後までその子を抜くことはできなかったんだぁ……。」
「へー。」
「年齢が違うから、その子が中学の部になって初めて最優秀賞獲れたんだけど、全然嬉しくなかったよ。」
「そうか?一位は一位じゃんか。」
「全然違うよ。私は辞めちゃったから中学の部は出たことないんだけど、きっとその子がずっと一位だったんだろうなぁって思う。」
今でも時々思い出す、私の淡い初恋。
「じゃあ、そいつのピアノの上手さに惚れたんだ?」
「うん。その男の子が弾いてた、“ 英雄ポロネーズ ” に惹かれたの。」
「英雄ポロネーズ……?」
「知ってる?ショパンの曲なんだけど。」
「………多少。」
一瞬、ミツの動きが止まった気がした。
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作者名:にかみつば | 作成日時:2021年6月23日 17時