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いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
電気をつけていなかったせいで、自室は真っ暗だ。
ぼーっとする意識の中、時計を見ると19時を過ぎたところだった。
そういえば、19時ぐらいに花火があがるって言ってたな。
本当なら、俺は今頃貴方と一緒に…
いつもの公園で、まだ待っててくれてるのかな。
俺が来ないのを分かって、家に帰ったのかな。
それとも、他の人と今頃一緒に居るのかな。
花火大会に行こうと、約束した時の貴方の顔を思い出すのと同時に、母さんに言われた言葉を思い出した。
「五条家の次期当主として、最強の呪術師になる事以上に大切な物は無いの。その使命を脅かす物は何であっても排除するわ。この意味…分かるわね?」
正直、貴方と一緒に居れるなら、五条家とか御三家とか、次期当主とかどうでも良かった。
けど、母さんはそれに気づいてた。
出来る事なら、謝りたい。
約束、守れなくてごめんって。
「…なんだ、これ。」
左胸に手を添えて、今まで感じたことの無い、心臓の痛みに戸惑った。
貴方に会えないって思うと、心にぽっかり穴が空いたみたいな感覚になる。
喪失感とか、虚無感みたいな。
今まで、家の奴等が呪霊に襲われて命を落としても、
こんな気持ちになる事なんて無かったのに。
外から、花火が打ち上がる音がした。
窓を開けると、夏の夜空に色とりどりに咲く花が視界いっぱいに広がった。
俺の世界はずっとこの屋敷の中だけだった。
周りには、大人ばかりで。
寄ってくる大人達は、「俺」が無下限術式と六眼の2つを持っていて、希少価値ってだけだから。
「俺」自身を見てくれる人なんて居なかった。
けど、貴方だけはそうじゃなくて。
本当の意味で、五条悟という人間に接してくれた。
外に出て、友達を作って、友達と遊ぶとか。
そんな経験初めてで。
ずっと、孤独で生きてきて、白黒だった世界に色を着けてくれた。
「…あ。」
冷たい感覚が、頬を伝った。
それに気づいた瞬間、次から次へと涙が垂れてくる。
この胸が痛い理由がわかった。
…俺、悲しいんだ。
もう、貴方に会えない事が。
一緒に居れない事が。
生まれて初めて見た花火は、
綺麗に咲く度に、俺の胸を締めつけていった。
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作者名:ハク | 作成日時:2023年9月15日 3時