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「さて、ユウさん。
あなたは生徒たちを自由にしてほしいと言いますが、僕は彼らに不当な労働をさせているわけではありません。
彼らは契約書の内容に合意し、僕と『契約』を交わした。
『契約』は”可哀想”だけか、そんな感情的な理由で他人が口を挟めるものじゃないんですよ。
つまり、一昨日お越しください。……ということです」
挑発ぎみにそう言えば、ユウは少し考え込んだ後、意を決したように口を開く。
「だったら、私も取引をします」
「！？おい、お前なに考えてんだ！？」
その言葉に、アビスとアゼルは顔を見合わせ笑い合い、アズールは平然とした様子でユウを見つめている。
「ほう、僕と取引をしたいと？
面白いことを仰る」
『ユウちゃんってば度胸あるぅ〜』
「よっぽどあの子たちが大事なのね」
ユウはアズールをまっすぐ見つめて返答を待っている。
「……ふぅむ、あなたが僕と取引したいのはわかりましたが……
しかし困りましたねぇ。確かユウさんは魔法の力をお持ちでない。
美しい声もなく、一国の跡継ぎというわけでもない。ほんとうにごく普通の人間だ。
それだけ大きなものを望むのでしたら、相応の担保が必要です」
「担保、だと？」
「たとえば……ユウさんが管理しているオンボロ寮の使用権、とか」
そう言うアズールの目は完全に獲物を狩る側の目をしており、それを見たジャックは察しがついたのか立ち上がり、今にも噛みついてきそうな目を向ける。
「！！てめーら、最初からそれが狙いで……」
「まぁまぁ、落ち着いてください」
『いいから座れよ』
立ち上がったジャックの肩に手を置き、ジッと目を見つめるアビス。
妙な沈黙が五秒ほど経ったその時、バン！！と音を立ててVIPルームの扉が開いた。
「その話、乗ったーーーー！！！！」
「グリム、いつからそこに！？」
「全身泡だらけになってやがる……」
グリムが登場したことで、ジャックの目線はアビスから離れてしまい、アビスは小さく舌打ちをした。
『チッ……』
「アビス、下がっていなさい」
『はぁい……もうちょっとだったのに』
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作者名：もぶピ
| 作成日時：2023年8月24日 2時
