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「気を取り直して!
我が校の伝統行事、ドリームアイドルフェスティバル……通称ドリフェスには、規定のルールがあります。
そのルールのひとつに、『得票数に規定値以上の差がない場合、延長戦を開催する』というものがあります。
今回の『DDD』でも何度か、延長戦が開催されたのは皆さんご存知でしょう。
配布したパンフレットにも、そのルールは明記されています。校則にもね。皆さん、ご確認ください。
今回の決勝戦における、『Trickstar』と『fine』の得票数の差は……
惜しくも、ほんの一票分のみですが、この延長戦開催の規定値に達しています。
あとひとり、誰かが『Trickstar』ではなく『fine』に投票していれば……。
延長戦とはならずに、『fine』の勝利が確定していたのに……!」
悔しがる椚を差し置き、Aがマイク越しに声を高らかに上げる。
『ということで、ルールに従って、延長戦に突入いたしま〜す!』
「あ、ちょっと!?」
『とは言っても、延長戦は各『ユニット』の判断で、棄権することもできます。
その場合、当然、棄権した側は自動的に敗北となります。
……それでも、私はもうやめといた方がいいと思うよ、英智くん』
マイクをオフにして英智の方を見つめるA。
英智は今にも倒れてしまいそうなほど顔色を悪くさせAを見つめ返していた。
『延長戦、する?』
「……自分のことは、自分がいちばん理解しているよ。
これまで、『fine』のみんなは僕の我が侭に付き合ってくれた。
無理をさせ、酷使して、全校生徒からの憎悪を僕と一緒に浴びてもらった。
これ以上は、僕の誇りが許さない。それに、君は察しているんだろう?僕が、もう立っているのも難しい状態だってことに。
ここが潮時だね。
これから先も、僕はアイドルでいたい。今回のドリフェスで、心からそう思えたよ。
ゆえに、ここで未来を、希望のすべてを投げ捨てることはしたくない。
______延長戦は、棄権しよう」
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作者名:もぶピ | 作成日時:2022年9月14日 1時