・嘘5つめ ページ13
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『………っ!』
視線も顔の向きを逸らしていても
赤く染まった彼の頬を見ると
__こちらだって、意識をしてしまう。
小瀧「はっ……早よ、食べさせてや。」
「…っ昨日だって、流星にしようとしてたやんか。」
そう口にするとそれまで掴まれていた腕を離し
少し拗ねたような顔をしては…
彼はまた直ぐに視線を逸らしてしまう。
『初めて見たよ。」
『こんなにも忙しない小瀧君。』
少しでも緊張する気持ちを消す為、
真っ向から1つ彼をからかう言葉と
イチゴのムースを乗せたスプーンを差し出す。
小瀧「…ちょ忙しないやと、言うてくれるやん。」
「……ん!美味いっ!!」
頬が落ちてまう〜!なんて
目を輝かせながら話している彼を見て
いつものような明るくて元気な姿を見れて
無性に嬉しくなってしまった。
小瀧「じゃあ〜、Aさんから一口もらったし」
「はい!俺の食べてるイチゴケーキも一口!」
『ん、それは結構です。』
『"小瀧望に食べさせるを強要した"と言われるので』
早いもので、
彼の嘘の彼女となって12日が経過している。
相変わらず、付き合っていることに対する否定的な話や噂は払拭されている訳ではないのが事実。
後、2週間と少しでこの関係も終わりを告げ
このように憧れであり片想いの相手である
貴方の隣に立つ事も金輪際2度とない。
『これは私の保身ですから。』
恐らく、この期間で貴方を嫌う理由を
見つけることは至難の業だ。
彼の見せる優しさに触れてしまうと
直ぐに嬉しかったり気持ちの高揚を感じる。
「お人好しで約束をしっかり守ってくれそうな子やな。」
もちろん、貴方との約束はしっかり守る。
この1ヶ月、利用しがいのある役にたつ意味で自慢の彼女となるから。
本当に他人任せな最低なお願いである事は
分かっているけど…しっかり約束を守る。
だから、その代わりに…
早く、私を嫌いになって。
最低な人だったと、それで恋心に諦めをつけさせて。
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「そないな噂、俺が全部消したる。」
「全て俺が強要したって、噂で塗り替えて。」
違う…違うよ。
最初から苦しそうな顔で笑っているのは。
私ではない。
「彼女を守るのは、彼氏として当然やから。」
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嘘で告白してくれたあの時から。
嘘であったと伝えた時も今も…
ずっと、小瀧君の方だ。
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作者名:水陰 | 作成日時:2023年10月11日 0時