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両耳にあてたヘッドホンからは
覚えのある会話 、声が聴こえる 。
" する事あるから1回帰って "
" んー … 面倒 "
" もー!早く!"
私と瑞稀の声 ……
今朝この会話をした記憶がある 。
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『 何よ 、これ …… 』
掃除をする音 、水を出す音 。
カーテンを開ける音 、缶を凹ませた音 。
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私の独り言まできっちり 。
嘘だと願う思いも虚しくなるほど 、間違いなく
両耳にあてたヘッドホンから聴こえてくる 。
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前日のフォルダをクリックすると
また私の声 、瑞稀の声 。
テレビの音やビニール袋の音 。
寒気がした
頭に浮かんだ文字は 、気持ち悪い 。
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両耳にあてていたヘッドホンを外して
部屋に戻ろう 。
瑞稀と話をするのはそれからだ 。
そう思ってヘッドホンに手を掛けた時 、
右の肩に重みが乗った 。
ふわっと香る瑞稀の匂いがして
瑞稀の手だと何となくわかる 。
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昔もこんな風に前を向いた私の肩に
後ろから瑞稀の手が伸びて来た 。
小学生の時 、中学生の時 、高校生の時 、
いつだって出席番号的には私の方がひとつ前で
伊野と井上が縦に並んでいた 。
しょっちゅうノートに落書きしていた私は
前の席からプリントを回された事に気づかず 。
瑞稀の手が私の右肩に乗ると同時に
早くしろと急かす声 。
その声に私はくるっと後ろを向いて
急かさなくてもいいでしょって言って 。
その後 、気づかないAが悪いって笑う瑞稀に
私も笑っていた 。
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懐かしい記憶が頭に流れたが 、
あの頃と現在は違う 。
右肩に置かれた手から冷気でも出ているのかと
思うほど右肩から全身へ徐々に寒気がした 。
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そしてヘッドホンを外そうとした手も動かず 、
後ろをくるっと振り向く事すら出来ない 。
硬直 、というのかな?
ひやりと変な汗が額に流れた気がする 。
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『 … あっ 』
動けない私からひょいっとヘッドホンを奪われた 。
両耳からヘッドホンが外れると
硬直していたはずの体がだらりとへばった 。
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恐る恐る横に顔を向けると
瑞稀が私をじっと見ていた 。
私は瑞稀に何を言われるのか 、何をされるのか
予想が全く出来ずにただゴクリと唾を飲んだ 。
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hiレベルな小5 - みるるんさん天才ですね(笑) (2020年2月24日 15時) (レス) id: 62d5677c5a (このIDを非表示/違反報告)
ちぇり - 天才か……って思いました。。普段ゴリゴリのハッピーエンドなものばかり読んでいましたが、こういうのもありだなって思いました!!読んでよかったです。 (2019年12月1日 1時) (レス) id: 533c7622c3 (このIDを非表示/違反報告)
もえか(プロフ) - ヒントが鍵になってすごく大切な役割をしていてすごくドキドキしました。今まで読んできた小説の中でも一番ドキドキしました (2019年4月11日 23時) (レス) id: fde18b38d0 (このIDを非表示/違反報告)
静 - 最後の一文は、最後までハラハラしながら読ませていただきました。です。変になってしまい、申し訳ございません。 (2018年8月16日 8時) (レス) id: 649cb61653 (このIDを非表示/違反報告)
静 - 途中で作間くんがテレビの裏を見るシーンがあったのでもしかしたらと思いましたが、まさか本当にそうだとは…最後までハラハラしながらきました読ませていただ (2018年8月16日 8時) (レス) id: 649cb61653 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるるん | 作成日時:2018年3月19日 6時