キズナ10

＊ ページ5

那須side



俺でよかった



みんなじゃなくて、俺でよかった







振りかざされる拳と

降り注ぐ言葉







＿誰かに言ったら


＿どうなるか分かってるよね







体を支配する恐怖に


俺は今日も1人で目を閉じる






-









-





ス「あ、那須くんちょっといい？」






大学の後

たまたま所用で事務所に立ち寄った帰り






「…はい？」






廊下で呼び止められた






あまり見たことないスタッフさん

多分、最近入った新しい方なんだと思う








ス「ごめんね、急に。」




「いえ…」





ス「…やっぱかっこいいね。」




「え…？笑」




ス「いや、ちゃんと顔見たの初めてだから。」




「はぁ…ありがとうございます。」






ノリがいいお兄さんみたいな

面白い人だと思った









でも








ス「ほんとさぁ、あのAって人なんなの？」




「…え？」







話の流れは、気づけば他のスタッフさんのことへ







ス「あんな言い方しなくてもさ。俺も馬鹿じゃないっての。思わない？」




「ぇ…あ、いや…あは…」






どうやら、事務所の先輩スタッフAさんに注意を受けて、それが気に食わないみたいで





ス「ったくさぁ…腹立つまじで。」






誰でもいいから、そのストレスをぶつける相手が欲しかったらしい









話を聞いてたら、Aさんの言ってること間違ってなくない？と思ったけど

そんなの言えないし



俺は苦手を返すことに徹するしかなかった









だけど




それがいけなかったのかな







ス「ねぇちゃんと聞いてる？なんか俺ばっかイライラしてるじゃん。」




いや、そもそも俺その話関係ないし




「は、はい、聞いてます…すいません…」





ス「まさか、Aさんの方が正しいとか思ってんの？」



「え、いや…そんなこと…」





ドキッとしたのを必死に誤魔化すけど









ス「はぁ、まじか。那須くんてそんな人だったの？」




「いや…俺は… ス「腹立つんだけど…」









ドンッ







……っ！









一瞬だった







衝撃と共に、俺は床に倒れてて




ズキズキと疼くみぞおち









え、今…





俺この人に殴られた…？









ス「腹立つから、君俺のおもちゃね。」









…悪魔の始まりだった








-









-




ドンッ









バンッ






ガタンッ









「っ……」

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