キズナ5

＊ ページ29

海人side


廉の声に、俺もみんなも視線を向けた

でも

廉「あの…ごめん…ちょっとだけ、話をっ…」

そう、廉が言いかけたとき

紫「お前から聞く話なんてないから。」

紫耀の低くて冷たい声が楽屋に響いた

廉「…え…」

紫「だから、お前みたいなやつから聞くことなんて何もない。話しかけんな。」


廉「しょ…お…」

神「記事読んで、ますますお前の軽さに呆れたわ…」

岸「お前がこんなやつだったって知らなかった…」

"お前"

もはや名前すら呼ばなくなって

俯く廉に、畳み掛けるようにみんなが言葉を投げかける

俺は何も言わなかったけど

紫耀の隣で目線で伝えた

廉、俺たちの気持ち分かった？


こんな裏切られといて

素直に廉の話なんて聞く気になれないよ…



紫「はぁ…とにかく。仕事はやるけど、それ以外は話しかけてこなくていいから。」

悔しさと怒りの混じった、紫耀の言葉は

俺たちの視線と共に

廉に向けられた


感じてほしかった

俺たちがどれだけ傷付いたか…




でも、この時本当に傷付いてたのは

俺たちじゃなくて


廉だったんだよね…

それに気付かず、俺たちが廉に向けた

鋭い刃は


俺たちが思ってた以上に、廉の心を

壊してしまっていた…



紫耀の最後に

また静まり返った楽屋


俺たちの前で俯いていた廉は

少しして、その顔を少しだけ上げ


廉「…ごめん、な…みんな…傷付けて…ほんまに、ごめん…もう、何も言わへんから…」


そう言って、楽屋を出て行った


それから仕事の時間になるまで、どこにいたのかなんて知らない

本番前に、衣装に着替えるため戻ってきた廉の視線は

もう俺たちに向けられることはなかった



もちろん、本番中はお互い普段通りを装い

カンペ上の会話はしたけど


それは偽りの会話で

カメラが止まり、楽屋に戻ると

廉は荷物を持ってすぐに出て行った



廉に対する気持ちは、紫耀たちと同じだったけど

4対1の構図になってることが

ほんの少しだけ気になって

出て行く廉の背中をチラッと見てたら


紫「海人、ほっとけ。今あいつと話したって、俺らが傷付くだけだから。」

紫耀にそう言われた


「そうだね…」

だから俺も、その日から

廉との距離を置いて

仕事で会っても、何も話さず

目も合わさずに過ごすようになった



人の気持ちと時間ってのはすごいもので

数日もすれば、その状態が当たり前みたいになって


今思えば、俺たち4人で

廉の存在を無視していた…

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